1869 釈迦の生誕とミロのヴィーナス 4月8日は何の日か

 
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 灌仏(くわんぶつ)の日に生れ逢う鹿(か)の子(こ)かな 松尾芭蕉

 旧暦4月8日に仏教の開祖・釈迦(ゴータマ・ブッタ、ゴータマ・シッダッタ)が生誕したという伝承に基づき、日本では毎年4月8日に釈迦誕生を祝う仏教行事・灌仏会(かんぶつえ。仏生会、浴仏会、龍華会、花会式の別名も)が行われている。一方、世界でも人気がある「ミロのヴィーナス」は、ちょうど200年前のきょう、ひとりの農民によって発見されたことをラジオ放送で知った。7都県に新型コロナウイルスによる非常事態宣言が出た直後の日本。こんな日だからこそ歴史を振り返り、希望の光を感じてみたいと思う。

 芭蕉の句について山本健吉編著『句歌歳時記 春』(新潮文庫)には、「芳野紀行の旅を終えて、奈良に帰って来たときの句。ちょうど4月8日で、古い寺々の多い古都では、花御堂をつくって仏生会を営み、誕生仏に甘茶を灌いでいる。たまたまその日に鹿の子が生れ合したという微笑ましい事実に、感を発したもの。旧暦4月だから、実は初夏の句」とある。私はこの句から、芭蕉と同じように生命誕生の喜びを感じるのである。

 69歳のときにクリスチャンなった、友人の田口武男さんの著作『蘊蓄 お釈迦さま  お坊さんより詳しくなる仏教の開祖 ゴータマ・ブッダの80年』(アマゾン・キンドル)には、釈迦誕生から入滅までを38章にわたって詳しく描かれている。釈迦は紀元前5世紀、インド領だったカピラヴァットゥ(現在はネパール領)という王国のスッドーダナという王の妻マーヤーから生まれた。

 マーヤー夫人はある夜、不思議な夢を見る。翌朝夫人は「遥か遠い天から六本の金色の牙を持つ純白の象が降りてきて、私の右脇からお腹の中に入った、本当に驚いた」と夫に打ち明ける。夢から10カ月後、臨月を迎えたマーヤー夫人が実家へ向かう途中にルンビニーという園で体を休めている際、薄黄色の花を取ろうと右手を伸ばしたとたん、男の子が右脇から生まれ落ちた。その子が後年、仏教の開祖となるゴータマ・シッダッタだった。

 マーヤー夫人が花を取ろうとした木は仏教三大聖樹のひとつ無憂樹(ほかに印度菩提樹=釈迦が悟りを開いた場所にあった、沙羅双樹=釈迦が亡くなった場所にあった)だといわれている。この木はインドから東南アジアにかけて広く分布し、インドでは乙女の恋心をかなえる木、出産、誕生・結婚にかかわる「幸福の木」だともいわれるそうだ。日本では温室栽培のものが販売されているようだが、あまり見かけない。菩提樹は、インド政府から贈られたものが千葉県の鋸山にある日本寺大仏広場に植えられているのを見たことがある。

 ミロのヴィーナスについては、散歩の途中NHKラジオ放送「今日は何の日」でやっていたのを聴いた。「1820年のきょう、エーゲ海に浮かぶミロ島でミロのヴィーナス像が発見されました。その144年後の1964年、昭和39年のきょう、東京の国立西洋美術館でヴィーナス像の公開が始まりました。海外で初めての公開でした。4月8日はミロのヴィーナス像発見と日本初公開の日です」

 ヴィーナス像はミロ(メロス)島の一農夫が発見、曲折を経てパリのルーヴル美術館に寄贈され、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」とともに同美術館の人気展示物になっている。紀元前2世紀末のヘレニズム時代の古代ギリシャで制作されたとみられる大理石を素材にした女性像で、同時に発見された台座に「アンティオキアの市民、メニデスの息子、アレクサンドロス」と記されており、これが作者名ではないかと推測されている。ただ、ルーヴル美術館のホームページには作者名は記載されていない。「この時期の芸術は大衆化し、どの方向からでも鑑賞に堪えうる激しい躍動感を持つ彫像が出現した」(美術史家の宮下規久朗神戸大大学院教授)といわれるように、両腕が欠損しているとはいえ、彫刻の傑作としてだれでもが知っている存在といえる。

 釈迦とミロのヴィーナスの直接的関連はない。しかし、いずれも「紀元前」という古代に由来する人物と彫刻という意味では関連があり、双方とも宗教、芸術という人間の精神面をカバーする重要な存在であり、心の支えでもある。古代から現代まで長い歴史の間に、人類は幾多の困難な時代に遭遇した。戦争、自然災害と飢餓、さらに未知のウイルス……。それらを乗り越え現代に至るのだが、さらにまた新型コロナウイルスという難敵が出現した。世界史で2020年が負の時代とならないためにも、人類の知恵が試されていると思えてならない。

 
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 写真1、ミロのヴィーナス(宮下規久朗『1時間でわかる西洋美術史』宝島新書より)2、柔らかな新緑が目に優しい季節になった

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