208 熱球 国語審議会その他

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新聞の読書欄は、書評担当委員が選ぶことし出版された本のベスト3というような特集を組んだ。12月恒例のもので、書評委員の好みがはっきりしていてなるほどと思う。だからといって、読んでみたいと思った本は少ない。私が12月に入って読んだ中でも当たり外れがけっこうあった。

文庫本2冊と新書3冊を取り上げてみる。文庫では重松清の「熱球」は悪くないと思った。かつて高校球児だった38歳の男が東京から娘を連れて故郷の山口に帰る話だ。重松自身、野球少年だったというだけに、野球を愛する人たちが次々に登場する。野球を知らなくとも一気に読める小説だ。

これに対し、伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」は、現実と非現実を混在させたミステリーであり、解説で激賞しているわりには心に響かなかった。いろいろと考えた作品だが、次に伊坂の小説を読みたいとは思わない。

最近、テレビのコメンテーターとして顔を出す伊勢崎賢治の「武装解除」は、伊勢崎自身が東チモール、シエラレオネ、アフガンの紛争処理を担当した経験に基づいて書いた国際紛争解決のための平和論なのだという。

多くの人々が犠牲になったこうした紛争でNGOがどう動いたか、興味深い本なのだが、カタカナ(外国が話題なので仕方がないかもしれない)と、不要とも思える横文字(英文)が多くて、読むのにくたびれる。大学の講義の副読本的な感じなのだ。

副読本という意味では、安田敏明の「国語審議会」もその印象が強い。副題に「迷走の60年」とあるが、戦後の日本の国語行政がいかに迷走を続けたかを資料を駆使して裏付けている。文学部の学生は必読か。
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最後に、沖縄について触れた花村萬月の「沖縄を撃つ!」は、毒々しい沖縄論といえる。周囲には沖縄大好き人間が多い。一度沖縄の生活を体験した人は、風土や人間の魅力からほぼ沖縄ひいきになるようだ。

花村はこうした「癒しの島」という沖縄への幻想をこの本で徹底的にたたくのだ。沖縄の恥部に容赦なく踏み込むノンフィクションは、沖縄ひいきの人々には受け入れられないかもしれない。だが、面白い。(2007.12.26)

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