1991 盤根錯節に遇いて利器を知る 他山の石より自民の石

 政治家の言動を見ていると、本当に勉強になります。自分の常識が間違っているのではないかとさえ思うことがしばしばあります。先日、元法相の河井克行衆院議員が、公選法違反(買収)事件の裁判で、これまでの無罪の主張を一転させました。河井氏は起訴事実の多くを認め、衆院議員を辞職すると述べましたが、これに対して自民党の二階俊博幹事長は、「他山の石」という格言を使って感想を述べました。私はこのニュースを見て、この言葉は他人事のように聞こえて違和感を持ちました。こんな言葉がまかり通ってしまうのが、今の政界なのでしょうか。    

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1975 いつまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ うそと特権意識と自らの利害と

 政治屋という言葉を使ったのは、コラムニスト・随筆家の高田保(1895~1952)だった。「政治家は次の時代のことを考え、政治屋は次の選挙のことしか考えない」と。昨今は「政治家はコロナ禍の一刻も早い終息を考え、政治屋はコロナなんて無関係。ただ特権意識を振りかざす」というべきか。平気でうそをつき続けた首相に続き、またもやうそがバレた議員たちの姿に怒りを通り越し、あきれ果てた人が多いのではないか。  

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1973 「高貴」という言葉は似合わない クローデルの評価はどこへ 

 先日のブログでフランスの外交官で詩人・劇作家ポール・クローデル(1868~1955)の『断章』という詩を紹介した。クローデルは、駐日フランス大使を務めたこともあって、大変な親日家だった。第2次大戦で日本の敗色が濃くなってきたころ、ある夜会で「私がどうしても滅びてほしくない1つの民族がある。それは日本人だ。彼らは貧しい。しかし、高貴だ」と語ったという。しかし時代を経て、今の日本人にこの「高貴」という言葉は似合わないと、私は思う。  

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1970 散歩途中考えること 不可思議な世論調査

  ここ1年私の散歩コースでもある遊歩道で平日、散歩やジョギングする人が少なくない。コロナ禍が影響していることは間違いないだろうと思われる。散歩は「(行く先・道順などを特に決めることなく)気分転換・健康維持や軽い探索などのつもりで戸外に出て歩くこと」(三省堂・新明解国語辞典第7版)だ。他人のことは知らないが、私は散歩をしながら様々な(独断と偏見に満ちた)考え事をしている。昨日の新聞に掲載された世論調査結果で不可思議なことがあったので、今朝の散歩ではその記事のことが頭を占めていた。    

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1969 生涯現役と老害と 仲代さんと政治家たち

 俳優の仲代達矢さんがラジオに出演し、最近米寿(88歳)を迎えたと話していました。1932(昭和7)年12月13日生まれ。今も現役の俳優です。政治の世界。新しくアメリカの大統領になったバイデンさんは78歳と、史上最高齢での大統領就任だそうです。日本でも80歳を超えても、現役を続ける政治家がおります。「老年における熱意と活力は、仕事をするのにすぐれた気質である」(岩波文庫ベーコン随想集・42「青年と老年について」)という言葉もありますが、そうなのでしょうか。    

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1968「民衆をなめるな」 コロナ禍の日常の中で 

「『民衆をなめやがって……』私はテレビの画面に見入りながら、何度も胸のなかで呟きました。この国は民衆を侮辱する国だと思いました。これほど民衆から誇りを奪って平気な国はない、と」。阪神・淡路大震災から昨17日で26年が過ぎた。同じように、民衆をなめているとしか思えない実態がコロナ禍の世界で繰り返されている。

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1959 生存競争と政治家「保身」に対する寅さんの声

 2020年も残すところ6日。コロナ禍に揺れる世界。ことしも政治家の危うい言動が目に付いた。そのうち3人の姿から「保身」という言葉が浮かぶ。ユニークな意味・解釈で知られる「新明解国語辞典 第7版」(三省堂)には「[生存競争から脱落しないように]自分の地位・名声などを守ること」と出ている。そうか、政治の世界も生存競争なのだ。だから日本の安倍前首相、トランプ米大統領、プーチンロシア大統領は生き残りに必死なのだろう。(カッコ内は柴又の寅さんの寸評です)       

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1956 心に響く政治家の訴え 日本の首相は劣勢

 画家のゴッホは、弟テオと親友の画家エミール・ベルナールに多くの手紙を書いている。その内容は含蓄がある。例えば、ベルナールに出した手紙(第4信)(岩波文庫)の中で言葉について、こんなふうに書いている。「何かをうまく語ることは、何かをうまく描くことと同様に難しくもあり面白いものだ。線の芸術と色の芸術とがあるように、言葉の芸術だってそれより劣るものじゃない」。言葉はそれほど難しいものだが、語り方によって芸術の域にまで達するということを言いたかったのだろうか。   

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1947 政治は国民を指導し取り締まるもの? 辞書作りは盤根錯節

 時々、辞書の頁をめくる。結構面白いことが載っている。最近、アメリカの大統領選挙、日本の学術会議委員任免拒否問題が連日新聞に載っている。いずれもが政治ニュースだ。そこで、「政治」について辞書を引いてみる。中にはユニークな説明もあり、考えさせられる時間を送ることになった。  

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1935 俯瞰(ふかん)って何ですか 庶民は政治を見ている

「総合的、俯瞰的観点に立って判断した」。日本学術会議の会員任命をめぐって、同会議から推薦された105人のうち6人が任命から外された問題で、加藤官房長官と菅首相は同じ説明を繰り返している。俯瞰は、高いところから見るという物理的意味と、物事を広い視野で見る、すなわち客観的に物事の全体像をとらえること――という2つの意味がある。この場合は後者を使っているのだろうが、どう見ても納得いく説明ではない。

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1933 流れに逆らう勇気 政権は高支持率だが……

 人がみな  同じ方向に向いて行く。  それを横から見てゐる心。          (石川啄木『悲しき玩具』より)  報道機関の世論調査で、30%台まで下がった安倍晋三内閣の支持率が、安倍氏の退陣表明(8月28日)直後に70%を超える驚異的回復を見せた。安倍政治の継承を唱える秋田出身の菅義偉氏が率いる菅内閣の支持率も60%台の高率という結果になったことを見て、へそ曲がりの私は啄木の歌と同じ思いになった。日本には本当に優しい人や健忘症の人が多いのかもしれない。

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1927「本の表紙を変えただけでは」 理想の政治家像とは

 「本の表紙だけを変えても、中身が変わらなければ駄目だ」。自民党の総裁選のニュースを見ていたら、こう言って、総理大臣(首相)になるのを固辞した政治家がいたことを思い出した。私は政治家は嫌いだ。だが、当時この政治家の気骨ある姿勢に驚き、自民党にもこんな人物がいるのだと感心した。時代は変わって、今こうした政治家の存在を知らない。

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1923 刀折れ矢尽きた首相 現代の政治家が失ったこと

 本来なら有終の美を来年の東京五輪で飾るはずだった。だが、安倍首相は28日、辞任を表明した。持病の難病、潰瘍性大腸炎が再発したためだ。あと1年の任期を残しての辞任は、刀折れ矢尽きる状態といえるようだ。病によって精魂ともに尽き、政治のリーダーを続ける意欲がなくなったのだろう。(それほど懸命に政治に取り組んだとは思えない。取り巻きの官僚の言いなりになったにすぎないのではないか、裸の王様だった、という声も聞こえてくる)安倍政権の功罪は様々だ。私から見たら罪の方が大きい(うそが多かった)のだが、野党に力がないから次のリーダーも自民党の誰かがなるだろう。その条件は?

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1921 金に頼る政治家たちへ 寅さんの怒りの口上が聞こえる

「天に軌道があるごとく、人はそれぞれ自分の運命というものを持っております。とかく気合いだけの政治家はうわべはいいが、中身はない。金を使えば何でもできると思っていたら、そりゃあ、間違いだよ。な、そうだろう」。暑い日々、家に籠ってぼんやりと新聞の川柳を読んでいたら、映画『男はつらいよ』の、寅さんの切れ味のいい口上が聞こえるような気がしてきた。そうか、金に頼って不正が発覚した政治家たちをいまいましく思って、寅さんは声を掛けてきたのだ。先月も寅さんに怒られる夢を見た。最近、どうやら天国の寅さんは地上の人間たちの行状にイライラしているのもしれない。                

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1914 核の脅威依然減らず 安らかに眠ることができない時代

「安らかに眠るに核は多すぎる」 小栗和歌子さん作のこの川柳は、1975年9月号の「川柳 瓦版」に掲載されたものだ。「安らかに眠る」とは、広島の原爆慰霊碑(1952年建立)の碑文「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」(雑賀忠義広島大学教授が揮毫)にあり、よく知られている言葉だ。広島に続き、長崎に原爆が投下されて75年。この川柳から45年を経ても世界の核廃絶は一向に進まない。  6日の原爆の日。慰霊式典での松井広島市長の平和宣言と安倍首相のあいさつは、今年もかみ合わなかった。市長は平和宣言の中で国連の「核兵器不拡散条約」(NPT、1970年発効)と核兵器禁止条約(2017年に成立)について触れ、共に核兵器廃絶に不可欠な条約であり、日本政府には核保有国と非核保有国の橋渡し役をしっかり果たすためにも核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いを受け止めて、この条約の締約国となるよう訴えた。これに対し安倍首相は、「立場の異なる国々の橋渡し役に努め、各国の対話や行動を粘り強く促し、核兵器のない世界実現に向けた国際社会の取り組みをリードしていく」と述べたものの、核兵器禁止条約には全く触れなかった。  この条約は「核兵器の使用によって引き起こされる壊滅的な人道上の結末を深く懸念し、そのような兵器全廃の重大な必要性を認識し、廃絶こそがいかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である」とし、開発から使用まで全面的に禁止することを目的にしている。2017年7月7…

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1911 私利私欲を憎め 小才子と小悪党がはびこる時代

 現代の日本社会を見ていると、小才子(こざいし)と小悪党が跋扈(ばっこ)し、私利私欲のために権力を動かしている者たちが大手を振って歩いている。これは独断と偏見だろうか。決してそうではないはずだ。コロナ禍に襲われた今年も残りは5カ月余になっている。このように書くのは気が早いと言われそうだが、災厄が早く去ることを願うが故のせっかちな表現をあえてしてみた。この間コロナで多くの人々が苦しむ中で、一部の人間は甘い汁を吸い、私利私欲のために走りまくったのは間違いない。  小才子は「小才の効く人、ちょっとした才知のある者」という意味だ。「残念ながら 今日 の日本の社会はこういう奴が沢山にあって、小才子 の天下になっている」(新渡戸稲造 『今世風の教育』)というように、人を誉める言葉ではなく、マイナス評価として使われる。この言葉で思い浮かぶのは、首相に忖度を続け全体への奉仕者であることを忘れた官僚の姿であり、小悪党といえばあの人、この人、あいつもそうだと何人かの政治家の顔がちらつく。毎日の新聞を読んでいてそうした話題が尽きないから、現代はまさに「悪貨は良貨を 駆逐する」グレシャムの法則を思わせる時代だと思う。  この法則は16世紀のイギリスの財政家・国王財政顧問トマス・グレシャム(1519~1579)がエリザベス女王(1世)に進言したといわれる経済法則だ。1つの国に価値の異なる2種類以上の貨幣が同一の額面で通用している場合、質の高い良貨は退蔵、溶解、国外への流出などにより市場から消え、悪質の貨幣だけが…

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1904「医」と「恥」から想起すること 国手が欲しい国は

 山形県酒田市出身の詩人吉野弘(1926~2014))の詩『漢字遊び』の中に「医」「恥」という短い作品がある。コロナ禍の現代を端的に表すような詩を読んで、私は漢字の妙を感じ、同時に多くの政治家の顔を思い浮かべた。  吉野の「医」は以下の通り。     「医」の中に「矢」があります   病む者へ、まずは矢のように駆けつける心情   そして、矢が的の中心を射当てるように   “ズバリ的中”の診断をするのが身上――ちなみに   国の病気を治す名手が「国手」――今一番欲しい人  (ブログ筆者注・「国手」とは。国を医する名手の意。名医。名人の医師。また、医師の敬称。以上広辞苑)  朝刊に「移動自粛『不要』菅氏が都に反論」(朝日)という見出しの、全文12行のベタ記事が載っていた。このところ毎日100人を超える感染者を出している東京のコロナ対策として、小池都知事が都外への不要不急の移動自粛を要請したことに対し、菅官房長官が記者会見で「移動自粛を要請する必要はない」と反論した、という内容だ。これを読んだ読者は、どちらを信じたらいいのか戸惑うだろう。緊急事態宣言解除後、感染者が増え続ける事態に対し、官房長官発言は経済優先の国の方針を踏襲したものだろう。だが、それでコロナ対策がうまく行くのかどうか全く分からない。このままで本当に大丈夫なのだろうかと危惧する。  コロナ担当の西村という経済再生担当相も危なっかしい。きょうの衆院内閣委員会で「危機感を持って対応する」といういつもの言葉を…

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1901 富山平野は「野に遺賢あり」 中国古典の言葉から

「野(や)に遺賢(いけん)なし」。中国の古典「書経」(尚書)のうち「 大禹謨(だいうぼ)にある故事である。「民間に埋もれている賢人はいない。すぐれた人物が登用されて政治を行い、国家が安定しているさまをいう」(三省堂・大辞林)という意味だ。現代日本の政治にこの言葉が当てはまるかだろうか。私はそうとは思わない。日本だけでなく、海外諸国に目を向けても首をかしげざるを得ない情けない状況が続いている。  ここに出てくる「大禹謨」というのは、今から約4000年前の紀元前1900年ごろに、夏王朝(伝説、実在説双方に分かれる)を創設した禹という人物の政策(はかりごと)のことをいう。禹は黄河の氾濫を収めた功績により帝位を受け、中国最初の王朝を創設し民を安定させたといわれる伝説の英雄である。  作家の陳舜臣は『中国五千年』(平凡社)という中国の歴史を書いた本の中で、禹を神話時代の人と記している。陳によると、「名君が名宰相を得て、国運を盛んにするというのも、中国史の一つのパターン」であり、禹は益という人物(賢者)に政治を任せて成功したという伝承があるそうだ。禹は現在の浙江省会稽で巡幸中に死んだとされ、後継者に益を指名したが、益が遠慮したため禹の子の啓が王位に付き、夏の世襲王朝(17王、14世)が続くことになったという。 「野に遺賢なし」ではなく、「野に遺賢あり」という言葉が宮本輝の『田園発港行き自転車』(集英社文庫)という長編小説に使われていた。富山平野で流水客土(赤土を水と混合し用水路を通して水田に…

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1900 コロナ感染者1000万人超 壮大なる無駄遣いアベノマスク 「ブログ1900回!」

 ブログ「小径を行く」は今回で1900回です。初めてから14年。ここまで到達しました。この記念すべき回にコロナ感染対策の「アベノマスク」、感染者1000万人について書いてみました。これも歴史なのでしょうか。  政府が新型コロナ感染拡大防止を目的として全世帯に配布(1世帯当たり2枚、計1億3千万枚)をした「アベノマスク」といわれる布マスクを利用している人を見たことがない。不思議な話である。私の家に届いたのは、安倍首相がマスクを配りますと、記者会見で宣言してから1か月半後の6月15日のことだった。周辺の家庭にも同時期に届いているはずだが散歩、ラジオ体操、日常の買い物、電車での買い物や通勤……。家族に聞いてもこれらの範囲内でこのマスクの人はいまだに見かけない。首相だけがつけている不思議なマスクは、新型コロナに右往左往した時代の象徴として、多くの人の記憶に残るだろう。  一時期マスクは店頭から消えたから、記者会見でマスクを配るという首相発言に期待を持った人もいるだろう。だが、その期待は裏切られた。マスクは小さいし、容易に届かない。届いたものは汚れているものも含まれていた。多くの世帯に届いたころは、ほとんどの店頭に様々なマスクが並んでいた。しかも日本は梅雨。布製のマスクは付けているだけで苦しいから合わない。(まだ届いていない地区もあるという) 「次なる流行にも十分反応できるよう、布マスクを多くの国民が保有することに意義がある」。菅官房長官の言葉は第2波の際に使ってほしいという言い訳にしか聞…

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1899 あの閃光が忘れえようか  広島を覆う暗雲

  あの閃光が忘れえようか   瞬時に街頭の三万は消え   圧しつぶされた暗闇の底で   五万の悲鳴は絶え    峠三吉の「八月六日」という詩は、こんな書き出しで、以下原爆投下後の広島の惨状を綴っています。あと1カ月余で、広島に原爆が投下されて75年になります。その広島は今、原爆とは異なる黒い雲に覆われているのです。前法務大臣河井克行、案里夫妻による公選法違反(買収)容疑事件であることは言うまでもありません。  案里氏が昨年夏(7月21日投開票)の参院選に立候補した際、広島県内の首長や議員ら94人に2570万円をばらまいた疑いが濃厚になっているのです。渡した疑いが持たれる夫妻は東京地検特捜部に逮捕され、もらった方も次々にその事実を認め、市長をやめるという人や、頭を丸刈りにして市長続投を主張する人など、さまざまな関連ニュースが続いています。「金権選挙」という言葉を思い出しました。  試みに「故事ことわざ辞典」(東京堂出版)で「金」にまつわる故事を引いてみました。たくさんあります。このうち、負の側面が強いと思われることわざを記してみましょう。  金があれば馬鹿も旦那 金があるおかげで、ばかがだんなといわれて世間をとおること  金が敵 金銭がわざわいのもと。金銭のために身を滅ぼす。金銭のために不和や反目を生じやすい  金が物言う 金銭の力で世間のことは解決できるのをいう  金で面(つら)を張る 金銭の力でむりやりに反対者をおさえつけること  金の切れ目が縁の切れ目…

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1885 新聞離れ助長が心配 検事長と新聞記者の麻雀

 新聞はかつて第4の権力といわれるほど影響力が大きかった。現在でも以前ほどではないが、新聞の力は侮れない。だが、インターネットの普及もあって若い世代の新聞離れが顕著であり、新聞業界が斜陽産業の道を歩んでいることは、誰しもが認めることだろう。それに追い打ちをかけるような事態が起きた。東京高検の黒川弘務検事長がコロナ禍によって外出自粛が求められている最中に、産経新聞記者の自宅で他の産経社会部記者、朝日新聞の社員(元社会部記者)と賭けマージャンをしていたことを週刊文春が報じ、黒川検事長は22日付で辞任したニュースである。黒川氏と麻雀に興じていた新聞記者の行為は、新聞の信用を失墜させ、ますます新聞離れに拍車をかけることになるかもしれないと、心配する。  新聞記者は取材対象に食い込まなければ、いいネタはとれないという。しかし、それが行き過ぎ取材相手と癒着、取り込まれてしまう記者もいる。担当する派閥の政治家と一体となるような言動をする政治部記者もいると聞く。社会部記者は権力と一線を画し、常に批判精神を忘れないが取材活動の基本であるはずだが、黒川事件の新聞記事を読んで、社会部記者も堕落したと思った。首相をも逮捕する権力を持つ高検の検事長が違法ともいえる法律の解釈変更によって定年が延長され、それを追認するような検察庁法の改定(改正ではない)が国会に提案され、しかも世はコロナ禍によって外出制限・三密を避けてほしいと政府が要請している時期に、この為体(ていたらく=みっともない有様)である。週刊文春によると、今回…

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1881 何をやっているのか日本の政治 床屋談義から

「今の日本の政治は何をやっているんでしょうね。本当にだめですねえ」。行き付けの床屋で、椅子に座ったとたん、鋏を持った理髪師がこんなことを私に言った。以前なら、私も感想を述べ「床屋談義」となるのだが、何しろコロナ禍が続く時期であり、「そうですね」と短く答えるだけにとどめた。髪を切ってもらいながら、私は理髪師が何を言いたかったのだろうかと考えた。そういえば、このところ新聞やテレビではコロナの話題のほかに、国会の呆れた動きが報道されており、理髪師はこのことも話したかったのだろうと推量した。  呆れた動きというのは、言うまでもなく国会の委員会で野党党首が「火事場泥棒のようだ」と指摘した、検察庁法改定案(あえて改正案とは書かない)を政府が成立させようとしていることだ。新型コロナのために全国に緊急事態宣言が出され、国民が外出自粛や営業休止をしている中で、それこそ不要不急の法案を通そうという政府の動きは、火事場泥棒といわれても仕方がないだろう。  1月末の黒川弘務東京高検検事長の検察庁法を無視した突然の定年延長と、検察官も国家公務員法による定年延長制度が適用されるという強引な法解釈の変更(これまでは検察官の定年は検察庁法に規定され、検事・検事長は63歳、検事総長のみが65歳と定められていた)に続き、法の改定によって検事長ら検察幹部を定年になっても政府の裁量でその職にとどめることができるという規定を新設するという。そして、政権に近いといわれる黒川氏は半年の定年延長によって、次の検事総長に起用されるので…

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1878 私の運動不足解消法 トランポリンで読書

 新型コロナウイルスによる感染拡大によって、緊急事態宣言(4月7日)が出されて1カ月が過ぎた。コロナ以前はスポーツジムでトレーニングをしていたのだが、不要不急の外出は控えてほしいという呼び掛けに応じて、このところ人のあまりいない時間の散歩程度しか外出することはない。雨の日は散歩もままならない。そこで始めたのがトランポリンを使った読書だった。  トランポリンは、アメリカの体操選手が1930年代に考案したといわれ、スプリングが付いたカンバスシートを使って飛び上がったり、空中で回転技をしたりする体操用の器具である。2000年のシドニー大会から、トランポリン競技は五輪の正式種目になっている。私が買った器具の説明書には、5分間で約1キロを歩いた運動量になると書いてあった。  とはいえ素人の私は、この器具で飛んだり跳ねたりはしていない。トランポリン上で歩きながら読書したらどうだろうかと考えたのだ。器具は手すり付きのものをホームセンターで購入し、「書見台」は家族が日曜大工で作ってくれた。早速やってみると、普通に歩くよりトランポリンの上で交互に足を動かす(上下させる)方が運動になるようで、30分程度やるとかなり疲れる。これを1日合計1時間程度やると、歩数計も1万歩を超える。カロリーの消費量もまあまあだ。書見台の高さもちょうどよく、トランポリンのハンドルバーにつかまっていれば問題なく本を読むことができる。  日本では外出自粛ということで、禁止はされていないから、近所の遊歩道は散歩やジョギングの人が…

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1862 東京五輪とコロナ WHOに多額拠出の背景は?

 7月~8月開催予定の第32回東京五輪が、新型コロナウイルスによる感染症の世界的流行により揺れ動いている。選択肢は予定通りの開催か、延期か(1年あるいは2年)、中止かの3つだが、予定通りの開催は誰が見ても難しい状況にある。そんな中、日本政府が世界保健機関(WHO)に新型コロナ感染国への緊急支援用として新たに1億5500万ドル(為替レートの変動が激しいが、日本円で約165~約170億円)を寄付(拠出)したことが明らかになった。日本でもコロナ対策が急務の時に、多額の拠出金というニュースについて、その背景を考えた。  東京五輪をめぐってはこのところ様々な意見が報じられている。スポーツ行事はほとんど中止、延期を余儀なくされており、五輪開催も黄信号状態にある。大会組織委員会の高橋治之理事が各報道機関の取材に答えて延期の可能性を示唆したのは、観測気球という見方が強い。これに続いて国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、記者団に開催中止か延期の判断はWHOの勧告に従うと語ったと報じられた。この発言によってWHOの判断が注目を集めることになった。  新型コロナウイルス問題では、WHOの動きに世界から厳しい目が向けられている。エチオピア出身のテドロス事務局長の言動が中国寄りで、WHOの対応が後手に回っているように見えるからだ。多くの報道があるのでここで具体的なことは書かないが、テドロス氏は現地13日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症への日本の対応について「安倍首相自ら先頭に立った、政府一丸と…

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1861 自家撞着の政治家 知識を身につけていても

 人間は生きよと銀河流れをり 新感覚派の俳人といわれた上野泰(1918~1973)の句である。「スケールの大きな世界。すでにほろんだ星も含む銀河が『人間は生きよ』と語りかけながら流れていきます。心に何か悩みや屈託があったとしても、この涼やかな銀河の流れが浄化してくれそうです」(倉阪鬼一郎『元気が出る俳句』幻冬舎新書)という解釈を読むまでもなく、コロナウイルスと闘う地球への応援句だと受け止めたい。まさに元気の出る一句といえる。  17という短い文字で四季折々の森羅万象を表現する俳句は奥深い。俳句に取り組む人たちは、それほどに言葉を大事にしているのだ。一方で、言論の府といわれる国会で、自身の言葉を取り消す大臣が相次いでいる。福島選出の参院議員である森雅子法相は9日の参院予算委員会で、東京高検の黒川検事長の定年延長に絡み、検察官の勤務延長の解釈変更の理由(社会情勢の変化)を問われると「東日本大震災の時に検察官は、福島県いわき市から国民が、市民が、避難していないなかで最初に逃げた。そのときに身柄拘束している10数人を理由なく釈放して逃げた」と答弁した。その後、11日に開かれた衆院法務委員会でこの答弁を「この答弁をしたのは事実。個人的見解だった」と言い訳して撤回、委員会の審議が止まってしまった。  たまたま参院予算委の国会中継のテレビを見ていたが、この人は何を言っているのだろうかと思った。検事長の定年延長とは何の脈絡がない上、自身が検察官の属する法務省のトップなのに、このような感情的発言をした。…

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1855 修羅場に出る人間の本性 喫茶店の会話から

 最近、新聞を読んでいて米国の政治家・物理学者ベンジャミン・フランクリンの言葉を思い浮かべることが多い。今朝もそうだった。この言葉を「実践している」(皮肉です)に違いない政治家や官僚のことが朝刊に出ていた。私だけでなく普通に生きている人にとって恥ずべき事柄と思うのだが、どうもそうでもない日本人が増殖しているようだ。行きつけの喫茶店でお茶を飲んでいたら、私と同じように思っている人がいることを知った。近くの席で2人の高齢者(いずれも75歳前後の男性。Bさんの方が年上らしいことが2人の言葉遣いで分かった)が話しているのを耳にした。それは以下のような会話だった。  A こんな言葉を知っていますか。「理性のある動物、人間とは、まことに都合のいいものである。したいと思うことなら、何にだって理由を見つけることも、理窟をつけることもできるのだから」  B ああ、アメリカのフランクリンの言葉だよね。昔、自伝を読んだことがあるので覚えていたんだ。  A  今日の朝刊を読んでいましたら、政治家も官僚も何をやっているのかと腹が立ってしまいましたよ。本当に自分たちがしたいことに理屈をつけているんですから……。  B  そうだね。この新聞(店にあった全国紙)を見ると、Aさんの言う通りだね。「新型コロナウイルス感染対策本部会合に小泉環境相ら閣僚3人欠席」とか「東京高検検事長の定年延長で人事院局長が答弁撤回」、「『桜を見る会』問題で首相答弁の信頼性揺らぐ」、「女性官僚と出張し隣同士の部屋を行き来できるコネ…

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1843 姑息な政府答弁書 反社会勢力の定義困難とは……

「姑息」(こそく)という言葉がある。辞書には「(『姑』はほんのちょっとの間、『息』はやむ、やすむの意から)一時のまにあわせに物事を行うさま。その場しのぎ」(旺文社・国語辞典)とある。これに加え、「俗に卑怯なさま」(広辞苑)、「近年『その場だけの間に合わせ』であることから、『ひきょうなさま、正々堂々と取り組まないさま』の意で用いられることがある」(小学館・デジタル大事典)――そうだ。政府が「反社会的勢力」という言葉について「定義は困難」という答弁書を閣議決定した。このニュースを聞いて、「姑息だな」と思った人は少なくないだろう。  報道によると、 政府は10日、首相主催の「桜を見る会」に「反社会的勢力」関係者が出席していたとされる問題に絡み、立憲民主党議員の「反社会的勢力の定義」に関する質問主意書に対し、「形態が多様であり、時々の社会情勢に応じて変化しうるから、あらかじめ限定的、統一的に定義することは困難」とする答弁書を閣議決定したという。政府は2007年、「反社会的勢力」について「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団・個人」と定義しているのに、今回、なぜ定義は困難としたのだろう。反社会勢力関係者が桜を見る会に出ていたことがはっきりすれば政権にとってダメージになるから、こんな馬鹿げた答弁書をまとめたとしか思えない。招待者名簿は廃棄したというが、出てこないとも限らないので、予防線を張ったのだろうか。  菅官房長官は10日の記者会見で「2007年の指針は何だったのか」と問わ…

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1840 続「語るに落ちる」人権意識欠如 「桜を見る会」名簿廃棄の首相答弁

 昨年6月、このブログで「語るに落ちる」という言葉(ことわざ)を使い、政治家の言動について書いたことがある。残念ながら、その後もこのことわざ通りの動きが政治の世界では続いている。連日、ニュースで取り上げられている「首相と桜を見る会」に関する安倍首相・菅官房長官の言い訳(質問に対する答弁というより、この言葉の方が適切だ)もこの範疇に入る。その極めつけは障害者雇用を弁解の材料にしたことで、弱者を利用した最悪の答弁といえる。  12月2日に開かれた参院本会議。野党議員(共産・の宮本徹議員)が資料要求した5月9日に、内閣府が名簿を廃棄したとの経緯(実態は慌ててシュレッダーに掛けたのではないか、後付けに悪知恵を働かせたのだろうと、誰もが思うはずだ)についての質問に対し、首相は「シュレッダーの空き状況や、担当である障害者雇用の短時間勤務職員の勤務時間等との調整を行った」と答弁し、「野党議員からの資料要求とは無関係」としていた。官房長官も4日の記者会見で首相答弁について「名簿廃棄は『予約から作業まで時間がかかり過ぎだ』と国会で疑問視されたので、作業を予定していた方が障害者雇用の職員で無理なく余裕を持って作業できる時間を確保する必要があったことを説明したのだ」と補足した。  これでは「障害者雇用の枠で採用した職員のせいで廃棄作業が遅れた」と、責任を障害者に押し付けているとしか思えない。「桜を見る会」招待者名簿の廃棄作業は共産党の宮本徹議員から資料要求を受けた1時間後に開始したと内閣府は説明し、首相は「…

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1825 あの川もこの川も氾濫 想像力欠如の楽観主義

 千曲川や多摩川、阿武隈川、那珂川という著名な川から、耳慣れない川まで数えることができないほどの河川が氾濫した。台風19号による未曽有の大雨は関東甲信越、東北を中心に甚大な被害を及ぼした。被害の全容はまだ分からない。浸水被害を伝えるテレビの映像を見ながら、台風15号に続く自然の脅威に身をすくめる思いの時間を送っているのは私だけではないだろう。  台風をめぐっては、多くのニュースが流れている。浸水し孤立が続く地区もあり、停電、断水の地区も少なくない。ワールドカップラグビーに出場したカナダチームが、試合が中止になった岩手県釜石市で被災地区の泥のかき出しなどのボランティア活動をしたニュースがあった一方で、東京消防庁から出動したヘリが福島県いわき市で高齢の女性を救助作業中、安全金具を付け忘れ高さ40メートルから落下させてしまい、女性が亡くなる悲劇も伝えられた。  今朝(15日)の段階で死者は60人以上となり、行方不明者も数多い。堤防の決壊個所は37河川、52カ所に及んでいる。こうした被害の実情からしても「予測されていたことから比べると、(被害は)まずまずに収まったという感じ」「日本がひっくり返るような災害から比べれば」(13日の自民党緊急役員会で二階俊博幹事長)という発言は、想像力を欠いた妄言としか言いようがない。  嵐や地震の直後にはその被害の実情は分からない。だから、軽々な発言は控えるべきなのだ。千曲川の堤防決壊の映像を見ればこの後どうなるのかと想像はできるはずで、決して「まずまず収…

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1809「おりた記者」から作家になった井上靖 適材適所のおかしさ

 このブログで時々言葉について書いてきた。今回は「常套(じょうとう)語」である。「套」は内閣告示の常用漢字表にないことから、報道各社の用語集(たとえば共同通信記者ハンドブック)では、これを「決まり文句」に言い換えることになっている。しかし、ここでは決まり文句ではなく常套語の方を使うことにする)今回は、大臣人事などでよく聞かれる「適材適所」という四文字熟語について考えてみたい。常套語の典型だと思うからだ。  先日、自民党所属の上野宏史厚労政務官が外国人労働者の残留資格をめぐる口利き疑惑で辞任した。自身は「法令に反する口利きをした事実はない」というコメントを出したものの、記者会見など公の場での説明はしないままである。大臣や政務官の人事がある度に、首相や官房長官は「適材適所」を口にする。だが、上野氏を含めて不適材と見ていい人事が繰り返されていることは、枚挙にいとまがない。  朝刊には驚くべき人事が掲載されていた。政府が30日の閣議で、読売新聞グループ本社会長の白石興二郎氏をスイス大使に充てる人事を決めたというのである。官房長官は記者会見での質問に「適材適所」と説明したという。民主党の菅内閣当時(2010年6月)、北京大使に総合商社、伊藤忠の元会長(当時は顧問)丹羽宇一郎氏、ギリシャ大使に野村証券顧問の戸田博史氏を充てたことがあり、民間からの大使起用もあり得るのだろう。  しかし、白石氏の場合、権力の監視役という使命を持つ報道機関のトップ(30日付で読売会長は退任したとのこと)だった人物…

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