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1904「医」と「恥」から想起すること 国手が欲しい国は

 山形県酒田市出身の詩人吉野弘(1926~2014))の詩『漢字遊び』の中に「医」「恥」という短い作品がある。コロナ禍の現代を端的に表すような詩を読んで、私は漢字の妙を感じ、同時に多くの政治家の顔を思い浮かべた。  吉野の「医」は以下の通り。     「医」の中に「矢」があります   病む者へ、まずは矢のように駆けつける心情…

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1897 五輪がもたらす栄光と挫折 アベベの太く短い人生

 東京五輪がコロナ禍により2021年に延期された。さらに大会の簡素化、再延期、中止といった五輪をめぐる議論が続いている。五輪は出場する選手にも大きな影響を与える。ティム・ジューダ著、秋山勝訳『アベベ・ビキラ』(草思社文庫)を読んだ。ローマと東京の2大会連続してマラソンで金メダルを獲得したアベベ。五輪によって人生が変わり、短い生涯となって…

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1893 東北から九州への想像の旅 潜伏キリシタンを描いた『守教』を読みながら

 私の地図を見ながらの想像の旅は続いている。今回は、東北から九州へと移る。潜伏キリシタンあるいは隠れキリシタンという言葉がある。江戸幕府が禁教令を布告し、キリスト教徒を弾圧した後も、ひそかに信仰を続けた信者のことで、2018年6月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に認定された。この言葉を聞くと、潜伏キリシタンとい…

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1892 青春の地は金峰の麓村 地図を見ながらの想像の旅(2)

  閑古啼くこゝは金峰の麓村 山形県鶴岡市生まれの作家、藤沢周平(1927~1997)の句(『藤沢周平句集』文春文庫)である。藤沢の死後、主に鶴岡で集められた色紙や短冊などに見られた7句のうちの1句で、藤沢は鶴岡師範学校を出た後、当時の湯田川村立湯田川中学校(現在は鶴岡市立鶴岡第四中学校へ統合)の教師(国語と社会)をしていたことがある。…

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1891 アルメイダの共助の精神 「大分の育児院と牛乳の記念碑」再掲

 帚木蓬生の『守教』(新潮文庫)は福岡県大刀洗町の国の重要文化財、今村天主堂が建つまでの長い背景(戦国時代から明治まで約300年間)を記した大河小説だ。この上巻に、九州で布教活動をした一人のポルトガル人が登場する。ルイス・デ・アルメイダである。私は2009年大分を訪れた際、県庁近くの公園で「育児院と牛乳の記念碑」というアルメイダを顕彰し…

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1890 空いっぱいに広がる山の輝き・さやけき鳥海へ 想像の旅(1)

 ここにして浪の上なるみちのくの鳥海山はさやけき山ぞ 山形出身の歌人、斎藤茂吉の歌集「白き山」(1949=昭和24年)に収められている山形、秋田県境にある鳥海山(標高2236メートル)を称えた歌である。名作『日本百名山』(新潮社)で、深田久弥は「名山と呼ばれるにはいろいろの見地があるが、山容秀麗という資格では、鳥海山は他に落ちない。眼路…

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1889 信頼性を失った新聞の衰退 インテグリティを尊重せよ

 新聞の契約更新にきた販売店の人に「コロナで折り込み広告も少なくなって大変でしょう」と聞いてみた。すると「うちはそんなにありませんが、コロナの感染拡大で新聞を取るのをやめる人がかなり出ています。折り込みの減少でやめた店(販売店)もありますよ」と、苦渋の表情で話してくれた。そんな矢先に東京高検検事長と産経、朝日の記者たちが賭けマージャン…

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1886 8月9日を忘れた政府関係者 『長崎の鐘』に寄せて

 2021年8月9日を東京五輪閉会翌日として「祝日」にする法案を政府が考えたそうだ。この日は長崎に原爆が投下された日である。祝日にするのはそぐわないのは自明の理ではないか。さすがに自民党議員からも「ありえない」という異論が出て、閉会式の日の8日日曜日を祝日として、9日を振替休日にすることで調整を進めている――という記事を読んだ。この日の…

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1885 新聞離れ助長が心配 検事長と新聞記者の麻雀

 新聞はかつて第4の権力といわれるほど影響力が大きかった。現在でも以前ほどではないが、新聞の力は侮れない。だが、インターネットの普及もあって若い世代の新聞離れが顕著であり、新聞業界が斜陽産業の道を歩んでいることは、誰しもが認めることだろう。それに追い打ちをかけるような事態が起きた。東京高検の黒川弘務検事長がコロナ禍によって外出自粛が求め…

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1880 専門医の厳しい言葉 辛い入院生活を描いた斎藤茂吉

「犯罪的です」。新型コロナに関するテレビを見ていたら、大相撲の三段目力士、勝武士さん(28)がこの感染症で亡くなったことに関して、専門医はこう話し、さらに「人災です」と強い口調で国の姿勢を批判した。つい最近まで新型コロナに感染しているかどうか、帰国者・接触者相談センターにPCR検査を受けるための相談・目安として「「風邪の症状や37.5度…

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1877 絶望の裏返しには希望が 東野圭吾『クスノキの番人』を読む

 古来、日本には神が木に依り付くという言い伝えがあった。全国の樹齢が千年以上という巨樹は御神木として、多くの人々の信仰の対象になった。東野圭吾の近刊『クスノキの番人』(実業之日本社)は、御神木である巨樹のクスノキに何かを求めようとする人たちと、そうした人たちをクスノキに案内することになった若者の物語だ。ベストセラーを連発するこの著者の作…

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1876「人生は一行のボードレールにもしかない」か 『阿弥陀堂だより』から

 コロナ禍による緊急事態宣言の期限がさらに延長されることが確定的で、外出自粛の日々が続くことになる。これまで経験したことがない状況の中で一日をどう送るか、人それぞれに工夫をしているはずだ。物理的、心理的に閉塞感に覆われた時、読書をする人も少なくないだろう。そして人はどんな本を読み、どんな作品に救われたのだろう。私は知人から届いた映画評を…

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1875 『ヴェニスに死す』を読む 繰り返される当局の愚行

 ノーベル賞を受賞したドイツの作家トーマス・マンの『ヴェニスに死す』(1913年作)は、50歳になった主人公の男性作家グスタフ・アッシェンバッハが旅行で滞在していたイタリア・ヴェニス(イタリア語ではベネチア。ヴェニスは英語読み)で、ポーランド貴族の美しい少年、タッジオに惹かれるという同性愛をテーマにした中編小説だ。映画化もされ、マーラー…

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1874 窓をあけよう 風は冷たくとも

 前回に続いて、詩の話です。大分県出身のクリスチャンで詩人、江口榛一(1914~1979)の「窓をあけよう」をこのブログで取り上げたのは8年前の2012年のことでした。あらためてこの詩を読み返してみました。最近の社会情勢に合致するような言葉が、この詩には含まれていました。   窓をあけよう。   窓をあけると風がはいる。   …

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1873 地図で旅する コロナ禍自粛の日々に

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため「他県への移動自粛を」や「越境しての来県を自粛を」と、自治体が呼び掛けている。他県ナンバーの車をチエックしている自治体、営業自粛の呼び掛けに応じず、営業を続けるパチンコ店の名前を知事が公表したというニュースも流れ、海外への旅行もできない。「コロナ自粛」の日々が続く中で、地図を見る楽しみがあったこと…

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1872 にぎやかな群衆はいずこへ 東京五輪は開催できるのか

 私はスポーツが好きだ。見るのも私自身がやるのを含めて嫌いではない。新型コロナウイルスによる感染症がスポーツ界にも大きな影響を与えている。無観客で可能な競馬や競輪、ボートレースなどを除いて、ほとんどのスポーツは世界的に中止になる異常な状態が続いている。1年を延期した東京五輪・パラリンピックも予定通り開催できるかどうか、全く予測できない。…

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1871 順境と逆境と 緊急事態宣言の中で

 逆境の反対語は順境である。前者は「思うようにならず苦労の多い境遇」(広辞苑)、後者は「万事が都合よく運んでいる境遇。恵まれた幸せな境遇」(同)という意味だ。ベーコンの『随想集(5)』(岩波文庫)には「順境の特性は節制であり、逆境のそれは堅忍である」とある。新型コロナウイルスの世界的感染拡大という事態に見舞われた現代は、人類にとって逆境…

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1870 何といふ怖しい時代  山村暮鳥の「新聞紙の詩」から

 群馬県出身の詩人で児童文学者、山村暮鳥(1884~1924)の作品に「新聞紙の詩」という詩がある。それは、新型コロナウイルスによる感染症が大流行をしている昨今の内外の現象を表現したような、何とも気になる内容なのだ。暮鳥の詩の中には「一日のはじめに於て」のように、明るいものも少なくない。だが、「新聞紙の詩」は、厳しい現実を直視したといえ…

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1866 科学には国境がない かみしめたいパスツールの言葉

 第一次世界大戦が終結したのは1918(大正7)年11月のことだった。この年の3月初めに米国カンザス州の陸軍基地から発生したとみられるインフルエンザA型(H1N1型)は、欧州戦線に従軍した米軍兵士を通じてヨーロッパに伝わり、さらに世界的流行(パンデミック)となり、3波にわたって猛威を振るった。「スペイン風邪」である。罹患者は推定で5億人…

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1864 桜の季節に届いた手紙「心は自由」「若者へ伝えること」

 春立つや子規より手紙漱石へ  榎本好宏  俳人の正岡子規と文豪、夏目漱石は頻繁に手紙を交わしたそうです。この句は立春の日、子規から漱石に手紙が届いた情景を描いています。立春から春の彼岸が過ぎ、新型コロナウイルスによる感染症が世界で爆発的に流行している中、私は最近、2通の手紙を受け取りました。ワクチンのない新しいウイルス感染症…

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1863 チャイコフスキーの魂の叫び 感染症と闘う時代に

 日本は光の春なのですが、世界は不穏な時を迎えています。皆さんはどんな日々を送っているでしょうか。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、多くの人たちは圧倒的に「不安」を抱いているといっていいかもしれません。私はチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を聴きながらこのブログを書いています。チャイコフスキーは、この曲で不条理な人生を精…

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1859 雷電が伝えたかったこと 猛稽古に込めた闘う姿勢

 凶作と飢餓、貧困に悪政が追い討ちをかけた天明・寛政年間(江戸時代)、相撲界にヒーローが現れた。古今無双の強さを誇った雷電為右衛門である。8日から始まった大相撲春場所(大阪)は無観客開催という異例の場所になった。テレビで歓声のない静寂な相撲中継を見ていて、雷電にまつわる一つのエピソードを思い出し、あらためてこのエピソードを書いた本を読み…

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1858 何も悪いことをしていないのに……上野敏彦著『福島で酒をつくりたい』を読む

 9年前の東日本大震災は多くの人々に大きな影響を与えた。特に原発事故の福島では、今なお避難先から住み慣れた故郷に戻ることができない人々が数多く存在する。山形県長井市で「磐城壽」という日本酒づくりに取り組む鈴木酒造店も原発事故によって福島を追われた蔵の一つである。上野敏彦著『福島で酒をつくりたい「磐城壽」復活の軌跡』(平凡社新書)を読んだ…

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1855 修羅場に出る人間の本性 喫茶店の会話から

 最近、新聞を読んでいて米国の政治家・物理学者ベンジャミン・フランクリンの言葉を思い浮かべることが多い。今朝もそうだった。この言葉を「実践している」(皮肉です)に違いない政治家や官僚のことが朝刊に出ていた。私だけでなく普通に生きている人にとって恥ずべき事柄と思うのだが、どうもそうでもない日本人が増殖しているようだ。行きつけの喫茶店でお茶…

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1853 秀逸な『罪の轍』 最近の読書から

 川越宗一の『熱源』(文藝春秋)が第162回直木賞を受賞した。今年になってこの本のほか、須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社文庫)、深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)、奥田英朗『罪の轍』(新潮社)を読んだ。いずれも大衆小説で、合間に芥川賞の古川真人『背高泡立草』(同)も手にした。前記の4作品は力作ぞろいだが、中でも『罪の轍』…

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1851 新型コロナウイルスにどう立ち向かう『ペスト』の人々を思う

 人口が1100万人を超える中国湖北省の大都市、武漢市の公共交通機関は23日午前から全ての運行を停止した。同市で発生した新型のコロナウイルスによる罹患者は拡大を続けており、同市は事実上の閉鎖状態になった。人類の歴史はウイルスとの闘いでもある。今回の発生源はコウモリや市場で売買された野生の蛇など諸説あるが、ウイルスは人類の想像を超えた繁殖…

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1848「昨日も今日も、そして明日」も 歩き続けること

  このところ、かなりの距離を歩いている。スマートフォンの歩数計アプリを見ると、正月三が日の歩数合計は5万歩だった。出かけることが多かったから特別だが、12月の1日当たりの平均は1万歩を超えている。歩くことは体調管理だけでなく物を考えるのに役立つから、寒い朝も苦ではない。 「私は歩いた、歩きつづけた、歩きたかったから、いや歩かなけ…

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1847 来年こそは平和であってほしい「生き方修業」を続ける仲代達矢さん

(来年以降も芝居を通して人々に伝え続けて行きたいことは何でしょうか、という問いに対し)「1つに絞ると、戦争と平和です」。NHKラジオの歳末番組で、87歳で現役を続ける俳優の仲代達矢さんがこんなことを話すのを、散歩をしながら聞いた。凍てつく寒さだが、仲代さんの声は暖かい。そして、仲代さんは付け加えた。「テレビを見ていると、(世界で)いろん…

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1846「第九」を聴きながら 横響と友人にブラボー!

 友人が所属する横浜交響楽団の定期演奏会を聴いた。《横響定期第九70回記念・横響と第九を歌う会50周年記念》と題した演奏会は、飛永悠佑輝さんが指揮し、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第一幕への前奏曲に続いて、ベートーヴェンの交響曲「第九番ニ短調合唱付き」を演奏した。総勢630人を超える合唱は迫力があって、今年のモヤ…

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1845 情報漏洩の当事者は同じ鈴木姓 特権利用の呪うべき行為

 総務省の鈴木茂樹事務次官が、かんぽ生命保険問題を巡る行政処分の検討状況を日本郵政の鈴木康雄上級副社長に漏洩したことが発覚、懲戒処分(停職3カ月)を受け辞職した。本来なら懲戒免職に当たり、役所の感覚の鈍さを露呈した処分といえる。偶然だが、この問題の当事者は「鈴木」姓の人物で、同じ鈴木姓の人たちにとって、苦々しいニュースに違いない。 …

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