1915 20年後の新聞 紙の媒体は残るのか

「20年後も(新聞が)印刷されているとしたら、私には大変な驚きだ」。アメリカの代表的新聞であるニューヨーク・タイムズ(NYT)のマーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)の発言を聞いて、驚く人、悲しむ人、当然だという人……さまざまな感想があるだろう。私は思う。というより願いである。新聞は必ず残る、と。でも、それは神のみぞ知るである。  トンプソン氏はCNBCテレビ(米国のニュース専門放送局)のインタビューで冒頭のような言葉で、20年後に紙の新聞はなくなることを予測した。報道によると、NYTの契約者数は6月で84万部。コロナ禍によって広告収入が半減したが、デジタル(電子新聞)での契約数は570万になっていて、この4~6月期の売り上げはデジタルの方が紙媒体よりも上回ったという。米国やオーストラリアで地方紙が廃刊に追い込まれたニュースも目にした。新聞業界には今、猛烈な逆風が吹いているのだ。  ドイツ出身の金細工師であり、印刷業者だったグーテンベルクが印刷に改良を加え、活版印刷を発明したのは15世紀のことである。活版印刷は紙媒体の発達に多大な貢献をし、新聞の発行部数増、発達にも寄与した。そして、今ライバルとして登場した電子媒体によって、紙媒体は苦戦を強いられ、NYT・CEOのような紙媒体の衰退を予測する人も少なくない。  世界ではコロナ禍による広告の激減が新聞経営に大きな打撃を与え、日本の新聞も例外ではないと思われる。日本新聞協会によると、日本の新聞発行部数は2019年が3781万124…

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1865 マロニエとクスノキの対話 困難な時代だからこそ

 3月もきょうで終わり。木々も芽吹き始める季節である。私が体操広場と呼ぶ広場にあるマロニエ(トチノキ)も少しずつ葉を出しつつある。葉の出し方は個体差があり、新緑が美しい木もあれば、まだ全く芽吹きのない木もある。明日から4月、広場は急速に緑に包まれる。そう、4月は「生命力」を感じる季節なのだ。2年前のブログでキンモクセイとけやきの架空対談をお届けした。ことしはマロニエと近くにあるクスノキの架空対話(マロニエは「マ」、クスノキは「ク」と表記)を聞いてみた。  マ クスノキさんもいよいよ葉が入れ替わり始めましたね。私たち落葉樹と違って、クスノキさんたち常緑樹は姿かたちがきれいですね。  ク マロニエさんの新緑が出始めるころは、ああ春がきたと感じて、私たちから見ていてもうらやましいくらいだよ。  マ そうですか。そうそう。このところ、私たちが植えられている広場に子どもたちの姿が目立ちますね。新型コロナウイルス感染症の流行で学校が休校になり、引き続き春休みに入っているので、平日でも子どもたちが遊んでいますよ。  ク 私の近くにあるベンチでは、定年になったと見える高齢者が座って、よくおしゃべりをしているよ。今朝も2人で難しい話をしていたな。  マ どんな話ですか。  ク 1人が新聞に載っていた、京都大学名誉教授の佐伯啓思という人の「異論のススメ」について話していたんだ。この人は保守派で知られる人で以前は産経新聞の常連執筆者だったそうだ。今朝の朝日新聞の朝刊には「現代文明かく…

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1860 東日本大震災から9年 被災地訪問記再掲

 きょうで東日本大震災から9年になる。9年という歳月は日本社会に様々な変化をもたらした。大震災のあと私が初めて被災地に入ったのは岩手県だった。以下に当時、別の媒体に書いた訪問記を再掲する。(政治は民主党から自民党政権に代わり、第2次安倍政権は現在も続く長期政権になった。 今、日本だけでなく世界では新型コロナウイルスとの闘いに目が向けられている。そうした中で安倍政権の危うさが顕著になっている。原発事故の福島の後遺症はあまりにも大きく、浜通り地方の原状回復の見通しは立っていない) 「被災地で感じる胸の痛み それでも人間は……」  長い人生では様々な事象に出会い、驚くことも少なくなる。感性や感受性が次第に鈍くなるからだろうか。そうしたことを意識していた矢先の東日本大震災だった。テレビの映像や新聞、雑誌、インターネットの写真を見て震えるほどの衝撃を受けた。その衝撃度は現地に入ってさらに増した。震災から1カ月以上が過ぎ、被災地ではがれきの撤去が始まり、街の復興を目指して動き出していた。日本人に突き付けられた大災害の痛みを感じながら、岩手県の被災地を歩いた。  高度1万メートル以上で飛ぶ飛行機の窓から三陸の町や村がかすかに見える。建物はマッチ箱のようだ。自然界で人間の営みははかなく心もとないことを実感する。その営みは自然の脅威にさらされると、もろくも壊されてしまう。悔しいのだが、その典型が今回の大震災だったと認めざるを得ない。だが、はかない存在の人間は、実はしたたかで簡単には降伏しないエネル…

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1857 不条理の春がきた コロナウイルス蔓延の時代に

 ドイツの文豪、ゲーテ(1749~1832)は、人が年をとることについて様々な言葉を残している。最近のコロナウイルス問題に関して、高齢者による無分別な行動のニュースを見たり読んだりしていると、自戒を込めてゲーテの言葉の意味を考えてしまう。以下はゲーテの年老いることを含んだ言葉である。  年をとることにも一つの取り柄はあるはずです。  それは、年をとってもあやまちは避けられないとしても、  すぐ落ち着きを取り戻すことができるということです。                (「タッソー」より)  寛大になるには、年をとりさえすればよい。どんなあやまちを見ても、自分の犯しかねなかったものばかりだ。                (「格言と反省」より)  老人は人間の最大の人権の一つを失う。老人は対等なものからもはや批判されない。                (同上)  年をとることは、何の秘術でもない。  老年に堪えることは、秘術である。                  (「温順なクセーニエン」より)  若者は条理にそむくと、  そのために長い苦痛に陥る。  老人は条理にそむいてはならない。  命が短いのだから。                  (同上)  最後の言葉に出てくる「条理」は、物事の道理、すじみち(広辞苑)のことである。「常識」と言い換えてもいいかもしれない。ゲーテは「老人は条理にそむいてはならない」と警告する。しかし、コロナウ…

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1856 美しき星空の下で 原民喜の詩とコロナ

 コロナウイルスが猛威を振るい出している中、ある会合に参加した。夕方から夜に続いた会合が終わり、自宅最寄りのJRの駅に着き、とぼとぼと歩き出した。しばらくしてやや疲れを感じ立ち止まった。ふと雲がない空を見上げると、星々がきらめいていた。今、日本を含め国際社会はコロナウイルスとの闘いに明け暮れている。空の星たちに言葉があったら「地球は悪戦苦闘の時代を迎えているが、まあ頑張りなさい」と、冷めたことを言うのかもしれない。  悪戦苦闘という言葉を象徴するのは、公立の小中高が3月2日から休校になるというニュースである。阪神淡路大震災や東日本大震災の被災地で、多くの学校が休校を余儀なくされたことがある。しかし、全国一斉に休校になるケースを私は知らない。それほど、事態は深刻さを増しているのだろう。唐突という言葉が当てはまる安倍首相の独断なのだろう。この政策が正しいかどうかは歴史が証明することになる。  それにしても、この人のやることは行き当たりばったりとしか思えない。江戸時代にあった「側近政治」が現代も繰り返されているのだろうか。  行き帰りの電車を表現すると、マスク姿の人々がスマートフォンにかじりついている。これが現代社会。この2つがないと、現代人から外れるのかもしれない。怒られるのを覚悟して言えば、久しぶりに電車を利用した私は不可思議な光景だと思ってしまった。  詩人で作家の原民喜の短い詩を思い浮かべる。原は被爆体験を描いた中編小説『夏の花』で知られている。何も知らずに、いきなりピカ…

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1854 結末は奇想天外の悲喜劇 社会風刺の映画「パラサイト」

「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)という韓国映画がアカデミー作品賞を受賞した。日本でこの言葉が使われるようになったのは、就職氷河期が続いた1990年代後半のことだ。辞書には「寄生生物・他人の収入に頼って生活している人を俗にいう語」(広辞苑)とある。世界的に格差社会(貧富の差)が顕著になっているから、この言葉は世界共通のものになっているといえる。大金持ちの家に入りこんだ貧乏一家がどのような結末をたどるのか。喜劇から悲劇へと発展する映画はメリハリがあり、結末は私の想像を超えていた。  韓国では、半地下にある住宅に住むのは最下層の困窮世帯といわれる。映画の4人家族もそうした極貧世帯で、ある時長男は外国に留学する友人の紹介で高台の高級住宅に住む大金持ちの家の女子高校生の英語の家庭教師になり、さらに妹もその家の男の子の絵の先生になり、2人はこの家の奥さんに気に入られる。その後、父親は自家用運転手に、母親は家政婦として入り込む。前任の運転手と家政婦は、巧妙な手段でやめさせた。4人は家族であることは隠し、見ず知らずの他人を装う。4人が大金持ちの家に入り込む経緯は巧妙で喜劇である。こうして4人は安定した収入を得るようになる。  だが、金持ち一家がキャンプに行った夜。外が土砂降りの中、4人がこの家でどんちゃん騒ぎをしている時、やめさせた家政婦がやってきて「地下室に忘れ物をしたので、取りに行かせてほしい」と懇願する。願いを聞き入れ、前の家政婦を家に入れたことから、物語は急展開するのだ。映画を…

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1852 ヒーロー日替わり時代 幕尻力士優勝の珍事

 NHKがテレビとラジオで生中継するスポーツは、現在では大相撲くらいしかない。それほど大相撲は国民的人気スポーツの位置を占め続けているのかどうか、私にはよく分からない。大相撲初場所で幕内番付の一番下位である前頭西17枚目(いわゆる幕尻)の徳勝龍が休場した横綱を除いて最上位の東大関、貴景勝を結びの一番で下して優勝した。徳勝龍の活躍は評価するが、幕尻の力士が最上位と当たって勝ち、優勝したことはまさに「珍事」といっていい。こうした今場所を見ていて、大相撲界が危機に瀕しているように思えてならない。  初場所。優勝した徳勝龍と13勝2敗と大活躍した正代、小さな体で連日国技館を沸かした炎鵬を除けばこれといって目立った力士はいなかった。遠藤は途中で優勝レースから外れてしまった。白鵬と鶴竜の両横綱は早々に休場し、カド番の大関豪栄道も5勝10敗と大きく負け越し大関陥落が決まり、引退することになった。大関から落ち10勝を挙げれば戻るチャンスがあった関脇高安も負け越し、1人期待された大関貴景勝も組まれたらダメという脆さを見せて徳勝龍に完敗してしまった。優勝インタビューで「自分なんか優勝していいのでしょうか」と語ったが、この言葉は徳勝龍の謙虚さを示すと同時に今場所の混迷ぶりを物語っている。  これまでの角界は歴代、強さと華やかさを併せ持つヒーローがいた。幕内優勝43回という不世出の記録を達成している白鵬は休場が珍しくなくなり、強引な取り口の勝ち方が目立ち、ヒーローという呼び方はできない存在になってしまった…

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1850 人類登場時代のチバニアン 地質年代に日本名認定

   国際地質科学連合は17日、千葉県市原市にある約77万4000~12万9000年前の地質時代を「チバニアン」(千葉時代)と呼ぶことを決めたという。地質年代に日本の地名が付くのは初めてのことである。ここまで至るには一部学者による反対行動などの紆余曲折があったが、「チバニアン」は世界的な地質名として認知されたことになる。私は4年近く前、この場所に行き、ブログに記した。この機会に当時のブログを以下に再掲する。  千葉の養老渓谷に出掛けたことがある人は多いだろう。自然が美しく、温泉もある。そこにもう一つの隠れた名所があることを最近知った。地質学的に貴重な場所で、地質学の専門用語でいうと「地球磁場逆転期の地層」と呼ぶ。養老渓谷から流れ出ている養老川沿いの崖面(露頭)にあり、ことし8月末から9月初めにかけて開催される地質学の交際会議でこの場所が磁場逆転期の地層として「国際模式地」に選ばれるかもしれない。その現場を地球の驚異を感じながら歩いた。  かつては地球の地磁気の向きは南北逆だったという。地磁気というのは、地球が示す磁気的現象で、地球を大きな磁石に見立てたときのN極とS極の向きはこれまで何度も逆転、最後の磁気逆転の時期は約77万年前だったと、国立極地研究所などの研究グループが2015年5月に発表している。その磁場逆転した証拠とした地層が養老川沿いの崖面(千葉セクション)だ。  この場所に行くには、養老渓谷に向かう県道から少し外れて右に上った市原市の田淵会館が目印になる。地区…

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1845 情報漏洩の当事者は同じ鈴木姓 特権利用の呪うべき行為

 総務省の鈴木茂樹事務次官が、かんぽ生命保険問題を巡る行政処分の検討状況を日本郵政の鈴木康雄上級副社長に漏洩したことが発覚、懲戒処分(停職3カ月)を受け辞職した。本来なら懲戒免職に当たり、役所の感覚の鈍さを露呈した処分といえる。偶然だが、この問題の当事者は「鈴木」姓の人物で、同じ鈴木姓の人たちにとって、苦々しいニュースに違いない。  森岡浩著『名字の謎』(新潮OH!文庫)によると、日本一多い姓は「佐藤」で、次に多いのが「鈴木」だそうだ。関東地方では、群馬県を除いて鈴木姓が佐藤姓を抜いてトップだから、今回のように悪いニュースで2人の当事者が重なるという偶然もあり得るのだろう。やめた事務次官は神奈川県、副社長は山梨県出身。  私の知り合いにも鈴木さんは少なくない。いずれも心優しく、いい人ばかりで、ニュースになった2人とは大違いである。前述の本によると、鈴木は和歌山県熊野が発祥の地。この地方では稲の穂を積んだものを方言で「すずき」といい、これが鈴木姓の由来だという。熊野を本山とする修験者が各地に移ってその地に鈴木姓を広めたというから、熊野信仰と縁が深い名字なのだ。そんなこととは露知らず(あるいは知っていたかもしれないが)、2人は新聞、テレビを賑わすバッドニュースの当事者になってしまった。 『ベーコン随想録』(岩波文庫)に「高い地位について」という一節がある。そこには「地位には善をも悪をもなす特権がつきものである。後者は呪うべきものである」と書いてある。事務次官は省内のことは何でも知る特…

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1840 続「語るに落ちる」人権意識欠如 「桜を見る会」名簿廃棄の首相答弁

 昨年6月、このブログで「語るに落ちる」という言葉(ことわざ)を使い、政治家の言動について書いたことがある。残念ながら、その後もこのことわざ通りの動きが政治の世界では続いている。連日、ニュースで取り上げられている「首相と桜を見る会」に関する安倍首相・菅官房長官の言い訳(質問に対する答弁というより、この言葉の方が適切だ)もこの範疇に入る。その極めつけは障害者雇用を弁解の材料にしたことで、弱者を利用した最悪の答弁といえる。  12月2日に開かれた参院本会議。野党議員(共産・の宮本徹議員)が資料要求した5月9日に、内閣府が名簿を廃棄したとの経緯(実態は慌ててシュレッダーに掛けたのではないか、後付けに悪知恵を働かせたのだろうと、誰もが思うはずだ)についての質問に対し、首相は「シュレッダーの空き状況や、担当である障害者雇用の短時間勤務職員の勤務時間等との調整を行った」と答弁し、「野党議員からの資料要求とは無関係」としていた。官房長官も4日の記者会見で首相答弁について「名簿廃棄は『予約から作業まで時間がかかり過ぎだ』と国会で疑問視されたので、作業を予定していた方が障害者雇用の職員で無理なく余裕を持って作業できる時間を確保する必要があったことを説明したのだ」と補足した。  これでは「障害者雇用の枠で採用した職員のせいで廃棄作業が遅れた」と、責任を障害者に押し付けているとしか思えない。「桜を見る会」招待者名簿の廃棄作業は共産党の宮本徹議員から資料要求を受けた1時間後に開始したと内閣府は説明し、首相は「…

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1831 日本メディアとイングランドチームに喝 ラグビーW杯余聞

 日本開催で盛り上がったラグビーのワールドカップ(W杯)。2日に横浜国際総合競技場で行われた決勝で南アフリカがイングランドを32-12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。その表彰式でイングランドチームが取った行動に批判が集まっている。海外メディアが報じたことで問題が大きくなったが、これに気が付かなかったのか、ロンドン発でカバーするという恥ずかしい結果を残した報道機関もあった。  テレビで決勝を観戦していた。表彰式が始まると、まず準優勝のイングランドの選手たちがビル・ボーモント・ワールドラグビー会長(元イングランド、ブリティッシュ・ライオンズ主将)から銀メダルを首に掛けてもらった。しかし、ロックのマロ・イトジェは首に掛けることを拒否して、手で受け取るのが映っていた。彼以外にも掛けられたメダルをすぐに首から外す選手もいた。テレビは優勝した南アチームを中心に映していたため正確な人数は不明だが、南アチームが金メダルをもらっている間に映し出された映像では、イングランドのかなりの選手はメダルを首から外していた。優勝するという姿勢で試合に臨んだものの、完敗してしまった悔しさの表れなのだろうが、見ていて不愉快だった。  ラグビーはイングランド(英国)中部のラグビーという町にあるパブリックスクール、ラグビー校で生まれたといわれる。同校が紳士を養成する学校として発展した経緯もあり、ラグビーは紳士のスポーツというのが代名詞である。試合が終わると、激しく戦った両チームはノーサイド(試合が終わると、敵味方の…

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1824 国籍と政治性排除のはずが ノーベル賞お祝い報道に?

 今年のノーベル化学賞に、スマートフォンや電気自動車に使われるリチウムイオン電池を開発した吉野彰さん(71)ら3人に贈られることが決まった。何よりのことである。吉野さんの受賞で日本のノーベル賞受賞は27人目になるという。しかし、アレフレッド・ノーベルは、この賞創設に関する遺言の中で「賞を与えるに当たっては、候補の国籍が考慮されてはならない」と注文を付けている。吉野さんの受賞決定に対し、首相がお祝いの電話をする日本。ノーベルの遺志とかけ離れているように思うのは、へそ曲がりの私の皮相的見方なのだろうか。  iPS細胞の研究で医学生理賞を受賞した京大教授の山中信弥さんが2012年10月8日、受賞の報を受けたあと、京大で記者会見した。この会見の冒頭、山中さんは「日本、日の丸の支援がなければ、こんな素晴らしい賞を受賞できなかった。まさに日本が受章した賞だ」と語った。しかしこの山中発言に、ノーベル賞委員会が激怒し、「あんな発言は絶対にしてはいけない」と異例の警告を発したのだという。ノーベル財団は受賞記念会を各国大使館や大使公邸で行うことを不快に感じていて、祝賀会の禁止令を出した時期もあったという。この話は共同通信ロンドン支局取材班編の『ノーベル賞の舞台裏』(ちくま新書)に詳しく紹介されている。    同書によると、山中さんに関するエピソードは、ノーベル賞委員会が政治性を排除した選考を守り抜こうとしていることを示すもので、山中さんの日本政府に対する謝辞は受賞者の功績と国家を混同したものであると書いてい…

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1821 多くは虚言なりか 闇深き原発マネーの還流 

 吉田兼好の『徒然草』第73段に「世に語り伝ふること、まことにあいなきにや、多くはみな虚言(そらごと)なり」という言葉ある。国文学者の武田友宏は角川ソフィヤ文庫の『徒然草』で、この段を「『うそ』の分析」と題し解説を加えている。関西電力高浜原発がある福井県高浜町の元助役から関電幹部らが3億2000万円の金品を受け取っていた問題で2日午後、岩根茂樹社長、八木誠会長らが記者会見した。このテレビ中継を見ていて、兼好の言葉が今も厳然と生きていることを思い知った。  武田は73段を以下のような現代文に訳している。 《世の中に広く伝わる話は、事実そのままだと受けないからか、大部分は「うそ」で固めてある。だいたい、人間は実際以上に話をこしらえて言うものだが、まして、時間的にも空間的にも遠く隔たると、無責任に話を作り変える。そして、文字で記録されると、それがまた、そのまま事実として定着してしまうのだ。その道の名人の優れた業績などを話に聞くと、無知で未熟な人間は、やたら、神のごとくあがめるけれども、道を心得ている人間は、そんな信仰心など起こさない。話に聞くのと実際に見るのとでは、何事も違うからだ》  73段に関する武田の解釈。 《話すそばから、「うそ」がばれるのも気にしないで、口から出まかせにしゃべり散らすのは、すぐに信頼できない話と判断される。また、自分でも事実らしくないと疑いながら、他人の話をそのまま、小鼻をぴくつかせながら、得意げに受け売りするのは、彼自身に「うそ」の罪はない。一方、こういう軽薄…

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1819 おいおい! 関西電力よ  理不尽・不正義まかり通る時代

「おいおい、どうなっているの?」と言いたいほどの、驚いたニュース。関西電力会長、社長ら20人に原発立地の福井県高浜町の元助役から3億2000万円分の金品が渡されていた。逆の場合ならありそうなことだが、こうした資金還流もあるのだからびっくりだ。金沢国税局の税務調査で明らかになった前代未聞の原発マネーの還流。関西の人々はどう受け止めるのだろう。  今のところこの資金の流れは、原発関連の建設会社などの顧問を務めていた元助役(ことし3月に90歳で死去)が、関電の原発関係部門幹部を中心にばらまいていたことが判明している。建設会社には関電から巨額の工事資金が流れているはずだから、まさしく原発マネーの還流といっていい。記者会見する岩根茂樹という社長の表情を見ていたら、何度も何度も目をぱちくりさせている。後ろめたさがありありだ。「返却が困難な状況があった」と説明したが、相手が亡くなっているから、言いつくろうことはできる。だが、それを信じる人は少ないだろう。堕ちて、堕ちた。賄賂にまみれ、腐臭が漂う電力会社はどこへ行くのか。  金沢国税局の税務調査に対し修正申告をしたのは昨年らしいから、関電の関係者はまさか、今になって漏れるとは思っていなかったかもしれない。しかし、「天網恢恢疎にして漏らさず」(「老子」73章。天の張る網は広い。粗いように見えるが、悪人を網の目から漏らすことはなく、悪事を行えば天罰を被る)である。それを関電の幹部たちは、思い知ったはずである。  経団連会長を務める日立製作所の中西宏明…

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1818 地球温暖化に背を向ける大人への警鐘 グレタさんの訴え

 16歳の少女の訴えを全世界の大人はどう受け止めたのだろうか。23日にニューヨークの国連本部で開かれた気候行動サミット。一番注目を集めたのは16歳の少女、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの大人への怒りを込めたスピーチだった。地球温暖化に背を向ける政治家・大人が数多く存在する中で、グレタさんの訴えが空振りにならないことを願うばかりである。  グレタさんはスピーチで「生態系は崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです」「若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来の世代の目は、あなた方に向けられています。もしあなた方が私たちを裏切ることを選ぶなら、私は言います、あなたたちを絶対に許さないと」などと訴え、「How dare you」という言葉を4回使った。新聞記事やテレビニュースでは、文脈から「よくもそんなことが言えますね」や「よくもそんなことができますね」と、日本語に翻訳されている。いずれにしろ大人への不信感を示したものと受け止めなければならない。  国連本部のスピーチといえば、イスラム過激派タリバンによって頭を銃撃され、奇跡的に命を取りとめたパキスタン(イギリス在住)のマララ・ユスフザイさんのことを思い出す。同じ16歳だったマララさんは、2013年7月12日、国連本部でスピーチし「学校に行けない子どもたちのために1冊の本と1本のペンを」と訴えた。この後、2014年に17歳でノーベル平和賞を受賞、世界的に影響力を持った少女となった。  今回のグレ…

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1816 正義の実践とは 東電旧幹部の無罪判決に思う

 机の後ろの本棚に『ことばの贈物』(岩波文庫)という薄い本がある。新聞記事やテレビのニュースを見ながら、時々この本を取り出して頁をめくる。そのニュースに当てはまる言葉ないかどうかを考えるからだ。福島第一原発事故をめぐる東電旧経営陣3人に無罪を言い渡した東京地裁の判決を読んで、米国の政治家でベンジャミン・フランクリン(1705~1790)の言葉に注目した。強制起訴を門前払いにした形の判決は、理屈だけを前面に出したものと言えるからだ。  フランクリンは、自伝の中で「理性ある動物、人間とは、まことに都合のいいものである。したいと思うことなら、何にだって理由を見つけることも、理屈をつけることもできるのだから」と、述べている。これは最悪の関係になっている日韓両国の政治リーダーにもいえることだが、ここでは判決について考えたい。  この判決の骨子は、①最大15・7メートルの津波予測のもとになった国の長期評価は、具体的根拠を示していないので、信頼性に疑いがある②事故当時の知見(考察して知り得た内容)では、被告3人に高さ10メートルを上回る津波を予見し、安全対策が終わるまで原発を停止させる義務があったとはいえない③事故前の法規制は、絶対的安全確保を前提としておらず、3人に刑事責任を負わせることはできない、の3点だ。  無罪ありきの前提に立てば、この3点に集約されるだろう。本来なら厳格に安全対策を練るべき責任があるのに、様々な理屈をつけて対策を講じなかった。そして「想定外の津波」という言葉で責任を放…

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1813 天災と人災「小径を行く」14年目に

   台風15号によって私の住む千葉県は甚大な被害を受けた。中でも大規模停電は、昨年北海道地震で起きた「ブラックアウト」の再現かと思わせた。東京電力によると、全面復旧にはまだかなりの時間を要するという。これほど深刻な災害が起きているのに、なぜかこの日本はのんびりとしている。新聞やテレビを見て私はため息をつくばかりだ。  被害が深刻化している最中、安倍内閣の改造があり、新聞はそのニュースでもちきりだった。どう見ても、取り巻きと政治家歴が長いだけの実績不明の人たちが登用されている。ホープといわれる小泉進次郎氏が環境相(兼内閣府特命大臣)に起用され、直後に福島県を訪れ、前任者の原田義昭氏の発言(10日の記者会見で、東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含んだ処理水について「所管を外れるが、思い切って放出して希釈するしか方法がないと思っている」と述べた)を謝罪した。得意のパフォーマンスである。彼が弁明することではなく、原田氏の問題のはずである。謝られた福島県も当惑しただろう。  この後、ヤフーがファッション通販サイトZOZOTOWNを買収し、ZOZOの創設者、前澤友作氏が代表取締役社長を退任するニュースが大きく扱われた。同時に前澤氏が自身の保有株を売却し、2400億円を手にすると報じられた。世の中にはこんな人もいるのである。停電によって炎暑地獄に暮らす人々とは別世界の話であり、不快になって途中でテレビを消した。  ブラックアウトは、電力会社の管内全域が停電することを言う。今回の千…

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1806 ハチドリの助けを呼ぶ声 アマゾンの森林火災広がる

 南米ブラジルでアマゾンの熱帯雨林が燃え続けているという。森林火災により今年だけでも鹿児島、宮崎を除く九州と同じ面積(1万8629平方キロ)が焼けてしまい、熱帯雨林が危機になっている。アマゾン地域には「ハチドリのひとしずく」という言い伝えがあるが、ハチドリたちは今、孤軍奮闘しているに違いない。  ハチドリは南北アメリカ大陸と西インド諸島に分布し、一番小さな鳥として知られている。金属光沢のある美しい鳥で、飛ぶ時の羽音がハチに似ているためこのような名前が付けられたのだという。アマゾンにも珍しくないから、言い伝えの中にも登場するのだろう。  日本の絵本にもなった言い伝えは以下のようなものだ。(拙ブログ2014年3月17日=1212回、3月28日=1221回から) 《森が燃えていました。森の生きものたちはわれ先にと逃げていきました。でも、クリキンディという名のハチドリだけは行ったり来たり。口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていきます。動物たちがそれを見て、そんなことをしていったい何になるんだ、といって笑います。クリキンディはこう答えました。私は、私にできることをしているだけ。(辻信一監修・ハチドリのひとしずく~いま、私にできること・光文社刊より)》  小さなハチドリだけでは森の火事は消せないかもしれない。だが、そのハチドリに続いて人間を含めた多くの生き物が力を合わせれば、森の火は消せるかもしれない……。この言い伝えは、自分ができることを自分なりにやるという、ボランテ…

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1802 グッドニュースとバッドニュース 昨今の話題から

 昨今、新聞やテレビのニュースになるのは暗い話題がほとんどである。輸出管理の優遇措置を認める「ホワイト国」から韓国を除外したことをめぐる日韓の対立、愛知県での「表現の不自由展」の開催直後の中止、アメリカの相次ぐ銃乱射事件、北朝鮮による飛翔体(短距離ミサイル)発射……など、バッドニュースが占めている。そんな中で、女子ゴルフの全英オープンで優勝した20歳の渋野日向子選手の話題はグッドニュースだった。 「福音」という言葉がある。辞書を引くと「喜ばしい知らせ。うれしい便り」のほかに「キリスト教で、キリストによって人類が救済されるという喜ばしい知らせ。また、それを伝える教え」(大修館書店「明鏡国語辞典」)と出ている。福音はまさにグッドニュースなのである。しかし、2019年8月の世界と日本からは、そうしたうれしい便りはほとんど届かない。  きょうは8月6日。テレビでは広島の原爆の日の「平和記念式典」の中継をしていた。会場には外国人の姿が目立つ。小学6年生の男女2人による「平和への誓い」の一節が心に響いた。《国や文化や歴史、違いはたくさんあるけれど、大切なもの、大切な人を思う気持ちは同じです。みんなの「大切」を守りたい。「ありがとう」や「ごめんね」の言葉で認め合い許し合うこと、寄り添い、助け合うこと、相手を知り、違いを理解しようと努力すること。自分の周りを平和にすることは、私たち子どもにもできることです》  経済戦争状態になってしまった日韓関係を見るにつけ、この広島の子どもたちの言葉を互いの政…

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1796 京都の放火殺人・あまりの惨さに慄然 人の命はかくもはかないのか

 34人が死亡し、34人が重軽傷を負った京都アニメーションに対する放火殺人事件は、日本の犯罪史上、稀に見る凶悪事件と言っていい。放火容疑者は病院に収容されているが、回復して動機の解明ができるのだろうか。放火による多数の犠牲者というニュースに、1980(昭和55)年8月19日夜、新宿駅西口で定期バスが放火され6人が死亡、22人が重軽傷を負った事件を思い出した人も少なくないかもしれない。世の中に不満を持った男による無差別テロともいえる犯行だった。男は裁判で無期懲役となり、服役中に自殺した陰惨な事件だった。あれから39年の歳月が流れ、同じように罪なき人々が多数犠牲になってしまった。  新宿バス放火事件の夜、通信社社会部の遊軍記者だった私は3週間に1度の泊まり勤務に入っていた。火曜日の午後9時すぎだった。パソコンがない時代のことである。2人のデスクはまだ机の上に置かれた多くの原稿と格闘していた。警視庁とデスクとを結ぶ黒い電話が鳴った。受話器を取り上げるだけでダイヤルの必要はない電話で、デスクの代わりに出てみると、後輩の警視庁担当記者が「新宿駅西口でバスへの放火があり、多数の死傷者が出た模様です。番外をお願いします」と叫んでいる。  番外というのは、通信社から各新聞社、放送局に速報を流すことを言う。当時は手書きであり、私は番外を書く用紙に「警視庁によると、午後9時過ぎ、東京・新宿駅西口でバスへの放火があり、死傷者多数の模様」と書き、デスクに声を掛けて渡した。その夜、私たち3人の泊まり勤務者は、この事件関…

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1794 新聞と誤報について ハンセン病家族訴訟・政府が控訴断念

 朝の新聞を見ていたら、「ハンセン病家族訴訟控訴へ」という記事が一面トップに出ていた。朝日新聞だ。ところが、朝のNHKや民放のニュース、共同通信の記事は「控訴断念の方針固める」と正反対になっている。どちらかが誤報なのだろうと思っていたら、安倍首相が会見し「控訴断念」を発表したから、朝日の記事は誤報だった。それにしてもこのような正反対の裁判の記事が出たのはなぜなのだろう。朝日の記者は詰めの取材が甘かったか、だまされたのだろう。  ハンセン病家族集団訴訟は、6月28日に熊本地裁で判決があった。ハンセン病の元患者の家族561人が国に損害賠償と謝罪を求めたもので、判決で裁判所は隔離という差別政策をとった国の責任を認め、総額3億7675万円(1人当たり143万~33万円)の支払いを命じた。これに対し、朝日新聞は9日付の朝刊一面トップで「政府は控訴して高裁で争う方針を固めた。一方、家族に対する経済的支援は別途、検討する。政府関係者が8日、明らかにした。国側の責任を広く認めた判決は受け入れなれないものの、家族への人権侵害を認め、支援が必要と判断した」という記事を掲載した。  ほかの新聞朝刊にこの記事は出ていない。事実なら朝日の特ダネ記事といえた。ところが、冒頭に書いたように、この記事の後追い取材をしたと思われる各報道機関は、正反対に「控訴断念」を流している。NHKは「安倍首相が決断」とも付け加えた。私の経験からしても往々にして後追いの方が正しいことが多いから、朝日の記事は間違いなのだろう。どうして、こうした…

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1793 日本は言葉の改まりやすい国  中日球団の「お前」騒動と日本

 プロ野球、中日の攻撃の際に歌われる応援ソングの中に「お前が打たなきゃ誰が打つ」という言葉があるそうだ。この「お前」という部分に与田監督が「選手がかわいそうだ」と違和感を示し、応援団がこの歌を使うのを自粛したというニュースが話題になっている。お前は「御前」のことであり、かつては「神仏や貴人の前」など、敬称として使われた。しかし、現代では主に男性が同等あるいは目下の者に使う言葉だ。中日の応援ソングをめぐる騒動は、言葉に対し人それぞれ微妙な感覚を持っていることを示している。  かつて、この言葉を普段からよく使う人が私の周辺にもいた。デスクという立場にあるこの人は、第一線記者の原稿を見たり、取材の指示を出したりする際に必ずこう言うのだった。「〇〇君(あるいは呼び捨てで)」と名前を読んだ後、「お前さんのこの原稿だがねえ……(原稿の内容について問い合わせの時)、「お前さん、これを取材してほしいんだ……」(取材の依頼の時)と話すのだった。初めに名前を読んでいるのだから「お前さん」は必要ないはずだが、必ず付け加えるのである。 「お前」だと見下すような印象があるが、「さん」が付くとそれが少し緩和され、仲間意識が伝わるから、彼はそれを意識して使っていたのかもしれない。落語を聞いていると、奥さんが旦那を呼ぶ際に使っているが、現代の家庭にこうした呼び方が残っているかどうか分からない。かつての社会部デスクは江戸っ子だったから、何気なくこの言葉が口に出たのかもしれない。  昭和の歌謡曲で「おまえに」というフランク…

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1782 絶対ではない人間の目 相次ぐ誤審の落とし穴

 ゴルフのように審判がいない競技もあるが、スポーツ界で審判は重要な役割を持っている。審判の判断に勝敗の行方が大きくかかわることが多く、「誤審」が話題になることも少なくない。人間の目は確かなようで間違いもあるため、最近はビデオ判定も珍しくない。サッカーのJリーグの誤審に続いて、大相撲でも夏場所13日目の栃ノ心と朝乃山戦で日本相撲協会に抗議が殺到する誤審(私はそう判断する)が起きた。50年前の横綱大鵬の大記録が途切れた際の誤審をきっかけにビデオ判定が導入されたといわれるが、今回も人間の目を優先した結果、落とし穴に落ち、相撲ファンに不信感を与えてしまった。  米大リーグをテレビで見ていると、「チャレンジ」という言葉が時々使われる。監督が審判の判定に異議を申し立てると、ビデオ判定員に確認を求めるのだ。2014年から採用された制度で日本のプロ野球でも監督が判定に対し映像によるリプレー検証を求める「リクエスト」という制度が2018年から実施されている。セーフかアウトか、本塁打かファールかなどで、判定が覆ることがしばしばある。  微妙な場面で人間の目が、見間違いを犯してしまうことがよく分かる。その典型が、今月17日に埼玉スタジアムで開催されたサッカーJ(1)リーグ、浦和レッズと湘南ベルマーレの試合のゴールの判定だった。前半31分、ベルマーレの選手によるシュートがゴールしたにもかかわらず、主審は右のポストに当たってゴールラインを割って反対側のサイドネットを揺らしたとして、得点を認めなかった。映像を見て…

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1781「政治とは距離を置く」 仏地方紙の気骨を羨む

 フランスのマクロン大統領が複数の地方紙のインタビューに応じた際、大統領府が記事を掲載する前に見せるよう求めていたことが明らかになった。記事の事前検閲といえる。反発した一部の地方紙はインタビューに加わらなかったという。「政治とは距離を置く」というのが理由だ。当然のことだ。昨今、日本の報道機関にはこうした報道機関の基本姿勢を忘れた幹部が存在することに歯がゆい思いがする。  新聞社や通信社の記者は、取材して書いた記事は事前に取材対象に見せることはしないのが原則だ。識者への談話取材などでその内容を説明することはあるが、記事そのものを相手に見せることはない。事前検閲に応じていたら、権力を批判する自由な記事は書けない。マクロン大統領のインタビュー記事を見せることを断った新聞社がある一方で、応じた新聞社もあったという。それらの新聞は「政治とは距離を置く」という原則を忘れたのか、初めからなかったのだろう。  このブログで何回か、日本の首相動静の記事について書いたことがある。首相番の政治部若手記者が首相の一日の動きを追い、時間ごとに場所、会った相手と目的(会議や会合など)を掲載している。この動静でこのところ目に付くのが、マスコミ関係者との会食・懇談だ。  連休明け後、その会食・懇談は顕著だ。ちなみに新聞報道によると▼8日(東京・丸の内のパレスホテル4階宴会場「桔梗」)▼9日(東京・千代田区の帝国ホテル内の「中国料理 北京」)▼15日(東京・港区の寿司店「すし処魚しん」)▼21日(東京・赤坂の日本…

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1780 権威に弱い民族性 トランプ氏の相撲観戦計画

 ドナルド・トランプ米大統領(72)が26日の大相撲夏場所千秋楽(東京・両国国技館)を観戦するという。土俵近くの升席に椅子を置いて座るというのだが、伝統を守るという名目で保守的な相撲協会も、米国のトップには異例の待遇といえる。トランプ氏の相撲観戦へというニュースを見ていて、太平洋戦争敗戦後、占領軍(GHQ)総司令官マッカーサーと総司令部に日本国民が約50万通にも及ぶ投書を寄せたというエピソードを思い起こした。権威に弱い民族性は、今も変わらないように思えるのだ。  国技館には土俵を見下ろす貴賓席があり、天皇皇后はここで観戦していた。新聞報道によると、今回は格闘技が好きなトランプ氏のために安倍首相が提案、升席に招待したという。ここは通常座布団に座るが、あぐらに慣れないトランプ氏のため特例として椅子を用意し、複数のSP(警官)が周囲に付く。スポーツ紙には千秋楽の正面升席は相撲協会がトランプ氏用に特別に確保、トランプ氏らは幕内の後半数番だけを観戦し、優勝者に「トランプ杯」を授与する予定だが、幕内前半ごろまでは正面升席の一角だけが空席のまま進行するという前代未聞の千秋楽になる見通し、という記事が出ていた。トランプ氏の相撲観戦の特別待遇は王様扱いなのだろう。  戦後の日本でマッカーサーとGHQ総司令部へのおびただしい投書があったことを明らかにしたのが袖井林次郎著『拝啓マッカーサー元帥様 占領下の日本人の手紙』(単行本1985年8月・大月書店、文庫本1991年2月・中公公論)である。袖井は米国のマッ…

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1778「はるかクナシリに」 国会議員の「戦争発言」と酒の二面性

 「知床旅情」という歌を知っている人は多いだろう。作詞作曲した森繁久彌さんや加藤登紀子さんが歌い、私も好きな曲である。この歌の一番の詞の最後は「はるかクナシリに 白夜は明ける」となっている。「クナシリ」は北方領土(四島)のうちの国後島のことである。つい先日、国後島へのビザなし交流訪問団に参加していた丸山穂高という衆院議員が飲酒後、訪問団の団長に質問する形で「戦争で島を取り返すことに賛成か反対か」という発言をしていたことが明らかになり、所属していた日本維新の会から除名された。本人は国会議員はやめない意向だが、こんな議員がいる国会の劣化は激しいといっていい。  この議員の発言について「失言」あるいは「大失言」という表現の報道を見た。失言は「言ってはいけないことを、不注意で言ってしまうこと。言いあやまり。過言」(広辞苑)という意味で、丸山議員の言葉は失言というよりも酒の勢いを借りての本音ではないかと私は思う。日本維新の会代表の松井大阪市長は「議員を辞職すべきだ」と語ったが、代表自ら辞職を勧告すべきではないか。(注記、その後の言動を見ていると、酒に関係なく、この人の考え方は危うい) 「古代ギリシャ人は、アルコールの化学的成分やその神経組織に対する影響については無知だったが、人間の意識にあたえる効果については不可思議な何ものかがあると認めていた。何杯かのワインによって“途方もない”喜悦に体をほてらせ、平凡さ、偶然、必滅とかを感じなくなるプルースト(筆者注『失われた時を求めて』の作者ばりの感覚を得…

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1770 新札デザイン・2千円・守礼の門は 司馬遼太郎の沖縄への思い

 2024年度から紙幣(1万円、5千円、千円)のデザインが変更になると政府が発表した。唯一、2千円は変わらない。普段、私はお札のデザインを気にしていないが、かつて1万円については「聖徳太子」という別称があったことを記憶している。表紙の聖徳太子がそれだけなじんでいたのだ。現在の1万円の顔は福沢諭吉であり、今度は渋沢栄一になるという。「しぶさわ」が1万円札の象徴として扱われる時代、日本はどんな歩みを続けるのだろう。  紙幣デザインの変更を聞いて、影が薄いとだれしも思うのは2千円札のことだろう。最近ほとんど見かけないし、1万円や5千円の買い物をして、そのおつりでもらうこともない。表は首里城の「守礼の門」で、裏は源氏物語絵巻のデザインだ。2000年に開かれた沖縄サミットを記念して発行されたが、中途半端な額のためか利用度は低く、既に製造は中止になっている。現在は発行された分だけが流通しており、ほぼ9割が沖縄県で使われているそうだ。それだけに今回のデザイン変更で使用停止になる可能性もあったが、何とか生き残った。 「戦前、首里の旧王城(注・かつての国宝)がいかに美しかったかについては、私はまったく知らない。(中略)いまは、想像するしかない。(中略)私の想像の中の首里は、石垣と石畳の町で、それを、一つの樹で森のような茂みをなす巨樹のむれが、空からおおっている」  これは、作家の司馬遼太郎が『街道をゆく6 沖縄・先島への道』(朝日文庫)というエッセー集の中で、首里について記したものだ。『街道をゆく…

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1763 世界はどこへ行くのか NZクライストチャーチの凶行

 ニュージーランド(NZ)南島最大の都市で「ガーデンシティ」と呼ばれるほど美しいクライストチャーチで、信じられない事件が起きた。2つのイスラム教モスク(礼拝所)でオーストラリア人の男が銃を乱射し、50人が死亡した。世界でも有数の安全な国といわれるNZでさえ、こうしたテロが起きる時代。世界はおかしな方向へと突き進んでいると思わざるを得ない。  クライストチャーチといえば、東日本大震災(2011年3月11日)の直前の2月22日、この街はM6・1の地震に見舞われた。この地震によって街の象徴、大聖堂の尖塔が倒壊するなどして多くの人が崩壊した建物の下敷きになり、死者185人が出たことは記憶に新しい。死者のうち28人は日本からの留学生だった。  テレビニュースで、事件の発生場所近くの公園が映し出され、どこかで見たことがあると思った。そうだ、この街の中心部にあるハグレイ公園ではないか。面積は165ヘクタールで東京日比谷公園の10倍もある広大な公園だ。難を逃れ、この公園に避難した人もいたようだ。10数年前、この街を訪れ、公園を歩いたことを思い出した。緑が多く、水が澄んだ川には遊覧用の小舟が浮かび、この街に住む人たちをうらやましく思った。  事件は白人至上主義に陥った28歳の若者の犯行だった。時代が進んでも人種差別は永遠に消えない。米国の白人による黒人差別の歴史は生々しいし、ヒトラー率いるナチスドイツはおびただしいユダヤ人を虐殺した。日本人もまた、アジアの他の国の人たちを見下した時代があった。21…

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1760 言葉が泣いている 検討から真摯へ

 昨今、政治家の常套(じょうとう)語として使われるのは「真摯」だ。以前から国会で使われている常套語の代表ともいえる「検討」という言葉の影が薄くなったほどである。本来「まじめでひたむきなこと」という意味の真摯が、いい加減な言葉として使われているようで残念でならない。折角の言葉も使われ方次第で、品位を失ってしまう典型といっていい。  国会の審議でよく聞かれる「検討します」という言葉は「よく調べて、対策を講じる」はずなのに、質問をはぐらかすために答える「何もやらない」という意味に使われることがほとんどだ。あいまいな意味の役人用語でもある。与党の質問には「前向きに検討します」という答弁が目立つのだが、野党の質問に対してはまともに答えないから、最近は「検討します」という言葉自体、あまり聞かれない。 「真摯」の方は、森友・加計問題や沖縄の辺野古新基地問題で政府首脳が連発している。その裏でどう見ても真摯とは思えない言動が明らかだから、その姿勢は実は「ふまじめでいい加減」に見える。2月の辺野古基地建設の是非をめぐる沖縄県の県民投票で、建設反対票が7割以上という結果が出た後、安倍首相は「真摯に受け止め、沖縄の基地負担軽減に取り組む」と発言した。だが、県民投票の翌日から土砂投入が再開され、玉城デニー知事との会談では「世界で一番危険といわれる普天間の状況を置き去りできない」と語るだけで、県民投票の結果を考慮しない頑なな姿勢を続けている。いわば無視といっていい。  そして、沖縄では「真摯」とは程遠い問題…

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1753 天に通じる肉親の言葉 池江選手の白血病公表

「人事を尽くして天命を待つ」というよく知られた言葉がある。「人としてできる限りのことをして、その結果は天の意思に任せるということ」(大修館書店・明鏡国語辞典)という意味だ。中国南宋時代の政治家で儒学者、胡寅(こいん)が記した『読史管見』にある「人事を尽くして天命に聴(まか)す」が出典といわれる。水泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表したニュースを聞いて、この言葉を思い浮かべた人は少なくないだろう。  若さにあふれ、向かうところ敵なし。まさに天才スイマー。そんな18歳を突然、病魔が襲った。「白血病と診断されたとき、頭が真っ白になった」。昨年10月、横浜市で開催された白血病の骨髄移植に関するシンポジウムで、大学在学中に白血病になった元患者の若い女性がこう話していたことを忘れることができない。  オリンピックという大きな目標に向かって歩みを続けている時に、突然立ちはだかった病気という大きな壁。「私自身、未だに信じられず、混乱している状況です」というコメントを読んで、池江選手が元患者と同じく不安な日々を送っていることが容易に想像できる。    辞書によると、「天命」とは①天が人間に与えた使命。天の巡り合わせ②天から与えられた命、天の定めた人間の命、天寿③天が罰す罪、天罰――の3つの意味(物書堂・精選版日本国語大辞典)があるそうだ。②と同様に「変えようとしても変えることの出来ない、身に備わった運命」(三省堂・新明解国語辞典)という説明もある。だが、この世に生を享けた以上、生きるためにで…

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