1962 繰り返す歴史 知恵を絞ろう

 歴史は繰り返すという。この言葉は、人類が成長していないことを表しているのではないか。コロナ禍のこの1年、世界、日本の動きを見ていると、そう思わざるを得ない。このブログで何回か書いている通り人類はウイルスに襲われ、それを克服した歴史といっていい。だが、今度のコロナは凶暴であり、立ち向かうにはあらゆる知恵を振り絞る必要があると思うのだ。

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1961 言葉の軽重 2020年の終わりに

 フランスの詩人、ステファンヌ・マラルメ(1842~98)は「詩は言葉で書く」と、教えたそうです。当たり前のことですが、言葉を発することはなかなか難しいものですね。2020年、今年ほど言葉が重く、あるいは逆に軽く感じたことはありません。新型コロナの感染拡大を防ごうと呼び掛ける世界の為政者たちの言葉の響きには、大きな差があったと思うのです。

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1960 潔癖症を見習おう 鏡花の逸話を笑ってはならない

 明治から昭和初期に活躍した作家の泉鏡花(1873~1939)は、『高野聖』や『婦系図』など、幻想的な作品を発表した。もし、鏡花が現代に生きていたら、コロナ対策の大家になっていたかもしれないと、想像する。鏡花は病的といえるほど、不潔を嫌う潔癖症だったからだ。アルコールが飛んでしまうほどグラグラ煮立たせた日本酒を飲んだという逸話も残っている。コロナの第3波が続く日々、鏡花のことを笑うことはできない。    

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1959 生存競争と政治家「保身」に対する寅さんの声

 2020年も残すところ6日。コロナ禍に揺れる世界。ことしも政治家の危うい言動が目に付いた。そのうち3人の姿から「保身」という言葉が浮かぶ。ユニークな意味・解釈で知られる「新明解国語辞典 第7版」(三省堂)には「[生存競争から脱落しないように]自分の地位・名声などを守ること」と出ている。そうか、政治の世界も生存競争なのだ。だから日本の安倍前首相、トランプ米大統領、プーチンロシア大統領は生き残りに必死なのだろう。(カッコ内は柴又の寅さんの寸評です)       

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1958 ベートーヴェンは《第九》が一番 何かを満たしてくれる曲

 NHK教育テレビで、今年が生誕250年になるベートーヴェンの曲について「ベスト10」のアンケートをした番組やっていた。一番に選ばれたのは、私の予想通り《第九》だった。なぜ日本人は《第九》が好きなのだろう。ベートーヴェン研究者で政治活動家(故人)の小松雄一郎(1907~1996)がその答えを書いているのを読んだ。要約すると「日本人は《第九》に何かを求め、第九にはそれを満たしてくれるものがある」というのだ。     

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1957『今しかない』が第2号に 哀歓の人生模様

 朝6時の気温は4度。昨日(氷点下1度)より5度高い。東南の空に、明けの明星(金星)が輝いている。日本海側では新潟を中心に大雪が降り、関越道で2000台以上の車が一時立ち往生した。一方、太平洋側はカラカラの天気が続き、房総半島の一部では水不足になっている。心まで冷え込む冬の到来……。そんな師走の一日。先日届いた『今しかない』という題の小冊子を読み返し、人生を振り返る時間を送っている。   

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1956 心に響く政治家の訴え 日本の首相は劣勢

 画家のゴッホは、弟テオと親友の画家エミール・ベルナールに多くの手紙を書いている。その内容は含蓄がある。例えば、ベルナールに出した手紙(第4信)(岩波文庫)の中で言葉について、こんなふうに書いている。「何かをうまく語ることは、何かをうまく描くことと同様に難しくもあり面白いものだ。線の芸術と色の芸術とがあるように、言葉の芸術だってそれより劣るものじゃない」。言葉はそれほど難しいものだが、語り方によって芸術の域にまで達するということを言いたかったのだろうか。   

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1955 2020年の読書から 2人の女性作家の伝記小説

 日本の新刊本は、年間約7万2000部(20019年、出版指標年報)発行されている。多くの本は書店に並んでも注目されずに、いつの間にか消えて行く運命にある。新聞の書評欄を見ても、興味をそそられる本はあまりない。というより、慌てて買わなくともいずれ近いうちに文庫本として再発行されるから、このところ新刊本はほとんど買わない。そんな読書生活。例外的に今年は2人の女性作家の新刊長編を読んだ。乃南アサの『チーム・オベリベリ』(講談社・667頁)と、村山由香の『風よあらしよ』(集英社・651頁)の2冊。前者は北海道十勝地方開拓の困難な始まりの歴史、後者は関東大震災直後に無政府主義者、大杉栄とともに憲兵大尉、甘粕正彦らに殺された内縁の妻伊藤野枝の骨太の生涯を描いた、評伝的要素が味わえる作品だ。以下は、2冊の独断と偏見の読後感です。    

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1954 コロナに負けない言葉の力 志賀直哉と詩誌『薇』と

 コロナ禍の日々。時間はたっぷりある。考える時間があり余っているはずだ。だが、世の中の動きに戸惑い、気分が晴れない日が続いている。そんな時、手に取った志賀直哉の『暗夜行路』の一節に、そうかと思わせる言葉があった。その言葉は、私たち後世に生きる者への警告なのだろうか。    

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1953 小説を読む楽しみ 開高健の眼力

 「小説は無益であるからこそ、貴重である。何もかもが、有効であり、有益であったならば、この世はもう空中分解してしまう」。ベトナム戦争取材記や釣り紀行で知られる作家の開高健(1930~89)の小説に対する見方((大阪市での教職員対象の講演録・28日付朝日より)だ。小説は無益だから読まないと公言する人もいるが、私は無益、有益を考えては読まない。まあ、面白ければいいし、暇を持て余すより、小説を読んだ方がいいと思うから、相変わらずランダムに選んだ本を読み続けている。    

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