195 新幹線のおしゃべり男 誇りを失った日本人

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東京から上越新幹線に乗った。比較的空いている平日。東京駅まで満員電車に35分立ち通しだったので、ゆっくり眠ろうと思った。だが、後ろの席に座った中年の男2人のおしゃべりが、その願望を打ち砕いてしまった。

よくしゃべるのである。あまりのうるささに、時々後ろを振り返るが、そんな私にお構いなく、2人の雑談は際限なく続く。

この冬、初めてコートを着た。空気は澄み、駅に向かう道は寒さが身にしみた。新幹線の車内は適度に空調が効いていて、すぐに眠くなった。だが、席に座るときにいやな予感がした。後ろの席の2人連れがやかましそうな雰囲気だったからだ。案の定、2人はおしゃべりを始めた。

健康に関する話題みたいだ。何で新幹線は全車両禁煙席なんだとか、健康診断の話、酒の話と、話題は次々に飛ぶ。その声が耳障りなのだ。妙に神経を逆撫でする声だ。周囲に響く音量なのだ。

私は眠るのをあきらめて、窓から景色を見ることにした。東京から埼玉、そして群馬へと進む。紅葉が飛び飛びに目に入る。群馬に入ると雪化粧をした高峰も増えてきた。

それでも、2人のおしゃべりは続く。こんな美しい景色を見ることもなく、彼らは他人に迷惑をかけながら貴重な時間を送っている。可愛そうだと思う。

ある駅に止まった。オクターブの高い方は「まだだね」とのんびり構えている。もう一方が、案内放送に気がつき、慌ててここです、と言い、スーツ姿の2人は大急ぎでドアに向かって行く。その後の車内は、これまでのうるささは何だったのかと思うほど静かさが戻っていた。私は彼らはどんな仕事をしているのだろうかと思った。たぶん、職場でも日常的におしゃべりをしているのだろうと想像した。

いま、若者のマナーの悪さが指摘される。もちろん、おばさんたちの傍若無人ぶりは相変わらずだが、実は男たちのマナーも大幅に低下しているのだ。それは、日本人が誇りを失った表れなのだろうかと、危惧するのである。かつて、日本の男は寡黙が美徳とされた。そうした時代は遠くなってしまったようだ。

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