1888 烈風に飛ばされる人命 コロナ禍は21世紀最大級のニュース?

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 20世紀最大のニュースは「第2次世界大戦」だ。世界で軍人・民間人総計5000万~8000万人が死亡した(8500万人説もある。日本は約310万人)といわれる。20世紀は戦争の世紀だった。このほかにも第1次世界大戦をはじめ朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸・イラク戦争等々、様々な戦争があり、多くの命が失われた。そして、「スペイン風邪」(1918年~3年間。罹患者は推定で5億人、死者は4000万人~1億人)という猛威に翻弄された。今、私たちは21世紀を生きている。世界的流行が収まらない新型コロナウイルス感染症。21世紀になって5分の1しか経ていないが、この狂暴なウイルスは今世紀「最大級のニュース」になるだろう。今後のことは分からない。だが、コロナ禍が世界に与えている影響は多大で、人類の歴史に残る極めて深刻な災厄なのだ。

 新型コロナが最初に見つかった中国(武漢市)の取材を担当する日本人記者たちは、防護服を着て取材をしたという。コロナ禍の現場取材が危険な状況下にある一方、コロナ禍が新聞経営に重大なダメージを与えている。オーストラリアでは広告減のため地方紙36紙が廃刊となり、76紙が電子版のみの発行にするという衝撃的なニュースも流れた。世界の産業界は軒並み苦境に立たされているが、日本の新聞も例外ではない。

 このブログを書いている今(5月30日午後6時過ぎ)、米ジョンズ・ホプキンス大学によると、世界で594万1992人が新型コロナウイルスに感染し、36万5252人が死亡している。世界の感染者が1千万人の大台を超えるという悪夢を見ることがないよう願うばかりである。一番影響を受けている米国は感染者が174万7087人、死者が10万2836人となっており、過去のベトナム戦争(死者5万8220人)や第1次大戦(同5万3402人)を上回っている。スペイン風邪(死者推定55万人)、南北戦争(死者49万8332人)、第2次大戦(同29万1557人)に次ぐコロナ禍の犠牲者数は何を物語るのだろう。政治とは決して無縁ではないはずだ。トランプ大統領は、コロナ対応が中国寄りだとして世界保健機関(WHO)からの脱退の意向を表明した。血迷っているとしか言いようがない。

「人の生命は地球よりも重い」という言葉がある。犯行時19歳の広島の少年による母親と妹の殺人事件上告審で最高裁大法廷は1948(昭和23)年3月12日、少年の上告を棄却、死刑を合憲とする判決を言い渡した。この判決の中で「生命は尊貴である。1人の生命は、全地球より重い」が使われた。イギリスの著述家、サミュエル・スマイルズの「自助論」を翻訳、1872(明治3)年に出版した『西国立志編』(中村正直訳)の序文にあったのがこの言葉だった。1977(昭和52)年9月28日、日本赤軍によるバングラデシュのダッカ空港での日航機ハイジャック事件で、当時の福田赳夫首相が赤軍の要求に応じて、身代金の支払いと収監していたメンバーを釈放した際、この言葉を述べたことでよく知られている。私も地方支局時代、殺人事件の裁判でこの言葉を引用した判決を何回か聞いたことある。

 だが、現代の地球は、この言葉とは縁が切れてしまったようだ。戦争の世紀といわれた20世紀の後、今世紀は収束の見通しが立たないウイルスによって、地球よりも重いはずの人命が次々に失われているからだ。まさに人の命は新型コロナという烈風に吹かれて飛んでいき、政治家の舵取り次第でさらに羽根のように軽くなってしまっている。日本では政府が「歴史的緊急事態」として関連の公文書を残すといっていたのに、新型コロナ専門家会議の議事録を作らないと公言している。「自由に発言してもらうため」と西村担当大臣は言い訳しているが、専門家会議の議事録こそ、新型のウイルスにどう対応しようとしたのかを検証するうえでも、さらにいつか再び登場する未知のウイルスとの闘いに取り組む上でも極めて重要な資料になる。そうした道理も分からないとしか思えない不誠実な政府の姿勢は、悲惨なコロナ禍の歴史で恥ずべき事例として刻まれることになるだろう。

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 写真 1、美しい夕焼け。とんがり屋根は千葉市緑区の市立小谷小校舎。2、同じ調整池から見た夕焼け。駅前のビルが遠くにある(撮影2020年5月30日午後6時過ぎ)。

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