1796 京都の放火殺人・あまりの惨さに慄然 人の命はかくもはかないのか

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 34人が死亡し、34人が重軽傷を負った京都アニメーションに対する放火殺人事件は、日本の犯罪史上、稀に見る凶悪事件と言っていい。放火容疑者は病院に収容されているが、回復して動機の解明ができるのだろうか。放火による多数の犠牲者というニュースに、1980(昭和55)年8月19日夜、新宿駅西口で定期バスが放火され6人が死亡、22人が重軽傷を負った事件を思い出した人も少なくないかもしれない。世の中に不満を持った男による無差別テロともいえる犯行だった。男は裁判で無期懲役となり、服役中に自殺した陰惨な事件だった。あれから39年の歳月が流れ、同じように罪なき人々が多数犠牲になってしまった。

 新宿バス放火事件の夜、通信社社会部の遊軍記者だった私は3週間に1度の泊まり勤務に入っていた。火曜日の午後9時すぎだった。パソコンがない時代のことである。2人のデスクはまだ机の上に置かれた多くの原稿と格闘していた。警視庁とデスクとを結ぶ黒い電話が鳴った。受話器を取り上げるだけでダイヤルの必要はない電話で、デスクの代わりに出てみると、後輩の警視庁担当記者が「新宿駅西口でバスへの放火があり、多数の死傷者が出た模様です。番外をお願いします」と叫んでいる。

 番外というのは、通信社から各新聞社、放送局に速報を流すことを言う。当時は手書きであり、私は番外を書く用紙に「警視庁によると、午後9時過ぎ、東京・新宿駅西口でバスへの放火があり、死傷者多数の模様」と書き、デスクに声を掛けて渡した。その夜、私たち3人の泊まり勤務者は、この事件関係の記事を電話で受けたり、関連原稿を書いたりするのに大忙しの状態が続いた。現場には警視庁や察回りの若手記者10人前後が取材に行き、次々に記事を送ってきた。被害を受けたバスは乗客30人が乗った京王帝都の定期バスで、西口のバス停で停車中、後部ドアから乗り込んだ犯人が火のついた新聞紙とガソリン4リットル入りのバケツを後ろの方に投げ込んだのだ。家庭的にも恵まれず、社会に対して不満を抱えていた男の社会への復讐的犯行だった。

 車内は炎上、阿鼻叫喚の状態となり、やけどのために多くの犠牲者が出た。男は放火後、現場から逃げたが、近くの地下道入口付近でうずくまっているところを見つかって逮捕された。男とは全く無縁の乗客多数が死傷した事件で、裁判では極刑(死刑)が予想された。だが、精神医学者による精神鑑定の結果、犯行時心神耗弱だったと判断され、東京地裁の判決は無期懲役だった。2審もこれを支持、犯人の無期懲役が確定した。男はこの後の1997年10月、服役中の千葉刑務所で首つり自殺、大きなニュースになった。

 京都の事件は容疑者も火傷を負っているため、解明には時間がかかるだろう。犯人にどんな理屈があるのか分からないが、あまりにも惨い事件の発生に、慄然とするばかりである。日本のアニメ界を背負う人たちは、突然この世との別れという理不尽で不条理な事態に追い込まれてしまった。その無念さを思うとやりきれない。人材という才能とアニメ界の膨大な資料の損失は計り知れない。社会が複雑化、貧富の格差が拡大する時代。人の命のはかなさを思わせる事件が頻発する、悪しき風潮を食い止める手立てはあるのだろうか。

 追記 京都の事件で19日夜入院中の1人が亡くなり、死者は34人、重軽傷者は34人になった。合掌。


 写真 散歩道に咲いたマツヨイグサ(通称宵待草)

この記事へのコメント

khoo-mitsu
2019年07月19日 18:37
何よりも夢も希望も未来のある多くの若者が一瞬で悪夢に遭遇してしまう理不尽さ、こんなことがあっていいのだろうか。被害に遭われた方々は勿論、家族や関係者の心中を思うとき誰でも筆舌に尽くし難いものがこみ上げてくるだろう。
令和日本、本当に理解できない事件や事故があまりにも多すぎる。いったい、どうしてしまったのだろう。どこに問題があるのだろう。恐れおののくようなことが平気で起こる社会はけっして許されるはずはない。しかし現実的に起きている。油断できない社会の到来なのか。あまりにも慄然として整理できない自分がいた。
遊歩
2019年07月19日 19:19
khoo-mitsu様

 国民のかなりの部分が、夢や希望を持てない時代なのかもしれません。本来なら、選挙によってこうした時代を是正すべきですが、そうならないことに歯がゆい思いをしています。
 人間の心には魔物が宿ることがあります。それを抑えるのが人間性なのですが、相模原の事件といい、今回といい狂気を爆発させるケースが目立ちますね。お説のように、油断の出来ない時代の到来なのかもしれませんね。